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第38回医療・福祉研究部会のご報告

第38回医療・福祉研究部会のご報告

第38回医療・福祉研究部会が、7月15日(火)午後6時30分から、大阪市中央区の備後町クラブA会議室で、「 世界に貢献する日本の医療」をテーマに開催され、関西ベンチャー学会の日野孝雄副会長(医療・福祉研究部会主査)による報告が、質疑応答を交えながら行われました。

報告の概要は次の通りです。

政府は日本の医療のアジア進出を成長戦略とした(13年成長戦略)。20年を目標に医療技術・サービスの輸出を13年の3倍1.5兆円を目標とする。この政府の支援を受け、医療機関、商社、プラント会社が現地の政府や財閥系医療機関と提携し進出を始めた。

拡大するアジアの医療を支援しながら日本医療を定着させる試みである。

これは富裕層を中心とした医療ツ-リズムの流れを汲む国際病院方式ではなく、各国の中間層・貧困層の患者を対象にしたBOP型医療ビジネスである。貧困層は中間層へ中間層は富裕層へと経済成長する10年後のアジアの発展を見据えた日本独自の医療ビジネス戦略といえる。

タイの医療ツーリズム国際病院の職員は自分の給料では、自分が働くこの病院では費用が高くて受診できないという。しかしアジアの通常の公立民間病院は技術が低く、環境が悪いのが現状である。この隙間にこそ日本の医療が進出するビジネスチャンスがある。進出した日本型医療を経験した患者は、日本での治療も考える始める。ブーメラン現象が起こり、日本での外国人患者は増加する。

アジアの医療ツーリズム型国際病院の課題は、手術室、ベッド、看護師は配置するが、医師は雇用しないことだ。マウント・エリザベス病院のように病院に近接してクリニックビルを建て専門医師が待機する。患者はクリニックを訪問して手術が必要であればエリザベス病院を活用する。総合医療に課題があることだ。またアジアの医療ツーリズム病院は不動産事業として不動産会社や投資会社の出資が多い。利益を上げるためには海外の富裕層を患者としなければならない宿命がある。自国の国民は取り残されているのが現状だ。

日本の課題①は、国民皆保険の名の下、医療機関は国が定めた診療報酬で経営しなければならず苦しい経営が続く。外国人患者が自由診療で収益は大きいと理解しても外国人患者向けの投資ができない。外国語が出来る職員を雇えない。留学経験がある職員が業務外で対応しなければならない。外国人向けの通訳などは診療報酬の項目になく病院の持ち出しか、職員の職務外サービスとなっている。最近は市民病院でも言葉に困ったら通訳を活用できますとある。しかしその通訳の費用は患者負担で4時間まで1500円と低い。このため本格的な医療通訳士を養成できていないのが現状である。診療報酬に外国人患者対応の費用を計上することだ。

日本の課題②は、日本の大学医学部がアジアの医師を教育し育成することだ。日本人医師の米国留学を見てもわかるように、米国で学んだ手術や治療手法を帰国後日本で適用する。その結果、医療機器や医薬品も踏襲することになる。つまり医療機器や医薬品は医師に付随して普及する。アジアへの日本型医療を普及させるためにはアジアの医師の卵たちを日本で教育育成することが大事である。

世界医師会ジュネーブ宣言では、医師は民族、国籍、人種、社会的地位等で配慮が介在してはならないとある。つまり人種や、国籍、貧富で差別してはならない。日本の医療界は国民皆保険の名の下、外国人患者の受け入れを閉ざしていないか考える必要がある。

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第38回医療・福祉研究部会のお知らせ

第38回医療・福祉研究部会

下記の通り、今年度第2回目の医療・福祉研究部会を開催しますので、奮ってご参加ください。

テーマ  世界に貢献する日本の医療

日時  7月15日(火)18:30~20:00
場所  備後町クラブA会議室(大阪市中央区備後町3-6-14アーバネックス備後町ビル3階=地下鉄本町駅下車・1番出口から徒歩1分)
講師  日野孝雄・関西ベンチャー学会副会長(医療・福祉研究部会主査)

内容  日本の医療は、今やアジアに積極的に進出している。 タイ、シンガポールのメディカルツーリズムとは異なる日本の医療進出を考える。WHOによれば、2012年のアジアの医療費は130兆円、5年前と比べ92%増加、今後中間層の増大で150兆円に成長すると予測されている。日本の企業、医療機関はどの様な方法でアジアに進出しようとしているのか。安倍政権も医療の輸出を成長戦略に位置づけ、積極的に支援している。

以上の内容による講演と、参加者によるディスカッションを予定。終了後は夕食を取りながらの交流会も考えています。

会場は地下鉄御堂筋線・本町駅下車 1番出口を出て、左(御堂筋とは反対方向)に進み、1つ目の角を左に曲がった2つ目のビルです。

mail to : hiroyuki.sakagawa@nex.nikkei.co.jp

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第37回医療・福祉研究部会のご報告

第37回医療・福祉研究部会のご報告

第37回医療・福祉研究部会が、5月28日(水)午後6時30分から、大阪市中央区の備後町クラブA会議室で、「医療・福祉と法律」をテーマに開催され、小川総合法律事務所の小川哲史弁護士による報告が、質疑応答を交えながら行われました。

小川弁護士は「司法ソーシャルワーク」と「福祉・医療の『現場』を守る法律」の2つのテーマについて報告しました。その概要は次の通りです。

「司法ソーシャルワーク」とは、自ら援助を求められない社会的弱者(多くは高齢者・障がい者)に対して、弁護士などが福祉機関と連携しながら、積極的に介入し、包括的な支援を行うこと。具体的には、福祉機関と日ごろから情報交換し、法的問題の可能性があれば、足を運んで相談をする。その結果、発掘された法的問題は弁護士に、福祉の問題は福祉の専門家にと役割分担し、包括的な支援ができる体制をつくる。経済成長が終焉し、人口減少、都市部への一極集中が進む中で、人口の6~7%が何らかの障害を持ち、65歳以上人口の約15%が認知症と言われており、社会的弱者への積極的な介入がなければ、社会保障、社会の安定が難しくなると考えられていることが背景にある。「司法ソーシャルワーク」の担い手・連携機関としては、弁護士、福祉機関のほか、行政、NPOがあり、これらがネットワークとなって協働する。私が最近まで常勤弁護士を務めていた「法テラス」も大きな役割を期待されている。さらに、薬物依存などからの回復を目指す自助団体「ダルク」や、「認知症家族会」、「アルコール依存家族会」など各種の家族会は、本人やその家族を支える強い力となっている。

また、福祉・医療の「現場」を法律により守るリスクマネジメントも、重要な課題となっている。従来は、医療・福祉分野の特殊性から、多少問題のある患者・利用者でも、法的対応をとらないのが普通だったが、最近では医療の安全管理・品質維持と、スタッフの安全確保のため、「対応マニュアル」の作成と訓練、警察・弁護士との協力が一般化してきている。特に暴力を振るったり、暴言を吐いたりするいわゆる「モンスターペイシェント」への対応では、複数人での対応、情報共有、ICレコーダーでの録音などがマニュアル化されている。それらマニュアルは現場で使えるように、できるだけ簡素化し、連絡ルートを決め、110番担当も決めておく方が、実効的である。新人スタッフもパターンを知っていれば、パニックになることが避けられる。実演での練習や、警察や弁護士との勉強会などに顔を出すことも大切である。

司法の役割は変化しつつあり、積極化と、事後救済を踏まえた予防法務が重要になってきている。潜在ニーズの掘り起こし、新たな領域の開拓が重要だ。

以上です。

医療・福祉研究部会幹事 坂川弘幸

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第37回医療・福祉研究部会のお知らせ

第37回医療・福祉研究部会

下記の通り、今年度第1回目の医療・福祉研究部会を開催しますので、奮ってご参加ください。

テーマ 医療・福祉と法律

日時  5月28日(水)18:30~20:00
場所  備後町クラブA会議室(大阪市中央区備後町3-6-14アーバネックス備後町ビル3階=地下鉄本町駅下車・1番出口から徒歩1分)
講師  小川総合法律事務所・小川哲史弁護士

小川弁護士の実例を挙げながらの講演と参加者によるディスカッションを通じ、医療の安全と法制度について考えます。終了後は夕食を取りながらの交流会も予定しています。

会場は地下鉄御堂筋線・本町駅下車 1番出口を出て、左(御堂筋とは反対方向)に進み、1つ目の角を左に曲がった2つ目のビルです。

mail to : hiroyuki.sakagawa@nex.nikkei.co.jp

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第35回医療・福祉研究部会のご報告

第35回医療・福祉研究部会のご報告

 第35回医療・福祉研究部会が、6月24日(月)午後6時30分から、大阪産業創造館6階会議室Cで、「医療・福祉と法律」をテーマに開催され、アーカス総合法律事務所の末永京子弁護士による「医事紛争に関する考察」と題した報告が、質疑応答を交えながら行われました。

 末永弁護士による報告の概要は次の通りです。

 医療事故・医療過誤について現場の実例をいくつか挙げ、不可避的に発生する事件・過誤が起きた時にどうすればいいかについて、考えを述べてみたい。医療事故とは医療の現場で起きるすべての人身事故のことを指し、過誤・過失の有無は問わない。医療過誤とは医療事故の1類型で、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為のことである。医療事故に法律が絡むケースとしては①民事責任が問われるケース②行政処分が下されるケース③刑事罰が科せられるケースーーがある。

 民事責任を問う場合の目的は、責任の有無の確定と被害者の損害の回復である。当事者としては、責任を問う側として患者本人、親族、相続人(患者が死亡した場合)、問われる側として医療機関、医師が挙げられる。医療機関、医師の双方が主体となりうることに注意すべきである。民事責任を問う手段としては①裁判所外の直接交渉②ADR(裁判外紛争解決手段)③調停④訴訟ーーの4つがある。重要なのは医療機関や医師に責任原因があるかどうかだ。医療過誤とは医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為のこと、つまり、医師の注意義務に違反する行為により患者に損害という結果が発生したことが認められなければならない。医師の行為と患者の損害との間に因果関係があることが必要である。注意義務の程度は専門的知識・技術を有する平均的医師を基準に定められ、その内容は診療当時の臨床医学の実践における医療水準となる。因果関係の立証の程度は一般の民事訴訟と異ならない。具体的には10人中8~9人が真実性の確信を持ちうるまでの明確な証明が求められる。

 最近の医事関係訴訟の処理状況をみると、判決よりも和解の方が多くなっている。また、判決の認容率(原告側の請求が1部でも認められた判決の割合)は、維持関係訴訟の場合2割台にとどまっている。通常の民事訴訟では8割台に達しているのに比べるとかなり低い。医療事故の場合、因果関係の立証がいかに難しいかが数字の上でも読み取れる。最近の医療過誤事件の具体的事例としては、医師の作為による場合として、イレウス(腸閉塞)のため胃管を挿入した患者が吐しゃ物をのどに詰まらせて死亡したケースがあった。このケースでは、訴訟外交渉の結果、患者側の勝訴的示談が成立した。また、医師の不作為によるケースとしては、胃がんの見落としというケースがあり、このケースでは訴訟外交渉から民事調停に進んだが、訴訟提起は断念せざるを得なかった。また、出血性ショックによる突然死というケースでも、患者側の敗訴的和解という結果になっている。このように特に医師の不作為による損害は、患者側が勝訴することはなかなか難しい。

 医療事故・医療過誤は不可避的に発生するものである。患者側は、医療は万能ではないということを理解する必要があるし、医療機関・医師側も、患者への説明の仕方に工夫が要る。医事紛争は証拠がすべて医療機関側に偏在しており、専門性も高いことから、患者側には大きな壁が存在する。しかし、患者側の心情としては、それで納得するということはなかなかできないものである。双方が冷静になって対応していくということしかないと言えよう。

以上です。

医療・福祉研究部会幹事 坂川弘幸 

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第35回医療・福祉研究部会のお知らせ

第35回医療・福祉研究部会

下記の通り、今年度第1回目の医療・福祉研究部会を開催しますので、奮ってご参加ください。

テーマ 医療・福祉と法律

日時  6月24日(月)18:30~20:00
場所  大阪産業創造館6階・会議室C(大阪市中央区本町1-4-5)
講師  アーカス総合法律事務所・末永京子弁護士

末永弁護士の講演とディスカッションを通じ、医療の安全について考えます。終了後は産創館近くで食事をしながらの交流会も予定しています。

mail to : hiroyuki.sakagawa@nex.nikkei.co.jp

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第34回医療・福祉研究部会のお知らせ

第34回医療・福祉研究部会
病院の経営改善ーある病院の取り組みー

日時 7月14日(土)18:00~20:00
場所 大阪産業創造館5階・研修室B(大阪市中央区本町1-4-5)
講師 本井治・りんくう総合医療センター経営管理監
テーマ 医療環境の変化と病院経営の実際
―― ある公立病院の実例から

講演内容
医療を取り巻く環境が厳しい中、全病院の1割以上を占める公立病院の経営について、ある市立病院の実例から改善の方策について考察する。

病院の経営についてはさまざまな手法がある。それぞれの病院の地域の環境、設立経過などがあり、また、その病院の持つ機能、理念によっても経営方針は異なる。さらに現在のわが国における厳しい経済状況を反映した医療制度改革とそれに伴う法・制度の改正、定期的に実施される診療報酬改定は、病院運営にとって決して追い風とはならず、病院数、病床数が減少しているという医療環境にある。

病院経営にとって極めて重要な収入の確保のあり方は多様であり、また、支出の節減についてもさまざまな方法がある。そうした病院経営のあり方には何か共通項があるのではないか、ということをこれまで総論的に本研究部会で述べてきた。

今回は、ある病院における経営改善方法の実例としていくつが挙げたい。したがって、今回紹介する内容が全ての病院に適応するとは言いがたいが、考え方については経営改善の共通項になるのではないかと考えている。

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