第37回医療・福祉研究部会のご報告

第37回医療・福祉研究部会のご報告

第37回医療・福祉研究部会が、5月28日(水)午後6時30分から、大阪市中央区の備後町クラブA会議室で、「医療・福祉と法律」をテーマに開催され、小川総合法律事務所の小川哲史弁護士による報告が、質疑応答を交えながら行われました。

小川弁護士は「司法ソーシャルワーク」と「福祉・医療の『現場』を守る法律」の2つのテーマについて報告しました。その概要は次の通りです。

「司法ソーシャルワーク」とは、自ら援助を求められない社会的弱者(多くは高齢者・障がい者)に対して、弁護士などが福祉機関と連携しながら、積極的に介入し、包括的な支援を行うこと。具体的には、福祉機関と日ごろから情報交換し、法的問題の可能性があれば、足を運んで相談をする。その結果、発掘された法的問題は弁護士に、福祉の問題は福祉の専門家にと役割分担し、包括的な支援ができる体制をつくる。経済成長が終焉し、人口減少、都市部への一極集中が進む中で、人口の6~7%が何らかの障害を持ち、65歳以上人口の約15%が認知症と言われており、社会的弱者への積極的な介入がなければ、社会保障、社会の安定が難しくなると考えられていることが背景にある。「司法ソーシャルワーク」の担い手・連携機関としては、弁護士、福祉機関のほか、行政、NPOがあり、これらがネットワークとなって協働する。私が最近まで常勤弁護士を務めていた「法テラス」も大きな役割を期待されている。さらに、薬物依存などからの回復を目指す自助団体「ダルク」や、「認知症家族会」、「アルコール依存家族会」など各種の家族会は、本人やその家族を支える強い力となっている。

また、福祉・医療の「現場」を法律により守るリスクマネジメントも、重要な課題となっている。従来は、医療・福祉分野の特殊性から、多少問題のある患者・利用者でも、法的対応をとらないのが普通だったが、最近では医療の安全管理・品質維持と、スタッフの安全確保のため、「対応マニュアル」の作成と訓練、警察・弁護士との協力が一般化してきている。特に暴力を振るったり、暴言を吐いたりするいわゆる「モンスターペイシェント」への対応では、複数人での対応、情報共有、ICレコーダーでの録音などがマニュアル化されている。それらマニュアルは現場で使えるように、できるだけ簡素化し、連絡ルートを決め、110番担当も決めておく方が、実効的である。新人スタッフもパターンを知っていれば、パニックになることが避けられる。実演での練習や、警察や弁護士との勉強会などに顔を出すことも大切である。

司法の役割は変化しつつあり、積極化と、事後救済を踏まえた予防法務が重要になってきている。潜在ニーズの掘り起こし、新たな領域の開拓が重要だ。

以上です。

医療・福祉研究部会幹事 坂川弘幸

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