講演会

2016年度全体例会のご報告

関西ベンチャー学会は2016年度の全体例会を、8月と11月の2回開催しました。8月の第1回目は、ベンチャー学会の提言取りまとめのための例会として、また11月の第2回目は、講演会としての開催となりました。概要は以下の通りです。

【関西ベンチャー学会 2016年度 第1回例会】

テーマ:関西における起業促進に何が必要か
日時:2016年8月26日(金)18:30~20:00
場所:備後町クラブ 3階C会議室
大阪市中央区備後町3-6-14アーバネックス備後町ビル3階

内容:
関西ベンチャー学会では、2016年度の事業として、「関西における起業促進のための提言」を発表しました。2016年度第1回例会は、その提言の取りまとめのための議論の場として開きました。

提言は当学会自身がやるべきことや大学・行政への要望を明らかにするものであり、理事会だけでなく、広く会員から意見を求めて作成されるべきと考えて、会員による全体例会を意見交換の場としました。例会では宮田由紀夫副会長(関西学院大学教授)が提言のたたき台を提示。これをもとに内容についての議論を交わしましたが、例会終了後の交流会に至るまで、会員相互の活発な議論が続きました。

【関西ベンチャー学会 2016年度 第2回例会(講演会)】

テーマ:関西の成長産業とベンチャーの可能性~関西経済白書2016から~
日時:2016年11月22日(火)18:30~20:00
場所:備後町クラブ 3階C会議室
大阪市中央区備後町3-6-14アーバネックス備後町ビル3階
講師:稲田義久・アジア太平洋研究所数量経済分析センター長(甲南大学副学長)
質疑応答の司会は林茂樹会長

内容:
第2回全体例会(講演会)は、稲田義久・アジア太平洋研究所数量経済分析センター長を講師に迎え、アジア太平洋研究所が発表した2016年度の関西経済白書の中から、ベンチャー育成・支援に関する部分に焦点を当てて解説をいただきました。

稲田センター長は「関西エリアにおけるベンチャーや新事業創出の動きは活発とはいえず、ベンチャーキャピタル投資は全国の6%程度にとどまる」と指摘。経済の長期停滞から脱するために「産業の新陳代謝、ベンチャー創出を加速させるべきだ」と主張しました。

さらに、このままでは関西経済はじり貧になるとして、関西の特徴とポテンシャルを生かすための「関西再興戦略」というべき成長戦略を策定すべきと強調。「供給サイドでは女性労働力の活用やサービス産業の生産性向上、需要サイドでは観光産業、健康・医療産業、そしてIoTやビッグデータなどの活用による第4次産業革命に関する産業の振興に力を入れるべきだ」と、具体的な内容を示しました。

講演の後は関西ベンチャー学会の林茂樹会長の司会で、会場参加者を交えた質疑応答を展開。引き続いて開かれた交流会では、今回の講演会にご招待した近畿経済産業局やアジア太平洋研究所の関係者も交えた歓談の輪ができました。

2015年度第2回講演会(10/29)のご報告

関西ベンチャー学会は2015年度第2回講演会(全体例会)を2015年10月に開催しました。講演会の概要は以下の通りです。

【関西ベンチャー学会 2015年度 第2回講演会】

日時:2015年10月29日(木)18:30~20:00

テーマ:起業家活動とイノベーションに関する実証研究

講師:加藤雅俊・関西学院大学経済学部准教授(博士[商学]一橋大学)

場所:備後町クラブ 3階A会議室 

大阪市中央区備後町3-6-14アーバネックス備後町ビル8階

内容

関西ベンチャー学会では、2016年度の事業として、「関西における起業促進のための提言」を発表する予定です。2015年度第2回講演会は、その提言に向けての勉強会として開きました。

加藤准教授は企業経済学、産業組織論を専門としています。今回は、どのようなスタートアップ企業が開業後に優れたパフォーマンスを実現するのかをテーマとする実証研究について、結果を話していただきました。

加藤准教授によると、スタートアップの登場は、競争促進、雇用創出、イノベーション実現において重要な意味を持っていますが、日本においては、スタートアップを対象としたデータが整備されていません。このため、加藤准教授らは2008年から2011年にかけて、計4回の継続アンケート調査を、スタートアップ企業を対象に実施しました。その結果、次のようなことがわかりました。

1、研究開発型とそれ以外のスタートアップで成長率に差は見られないが、前者においてはより積極的な研究開発をしている企業ほど成長する傾向にある。また、研究開発型企業に対する開業支援は成長に貢献している。

2、創業者の人的資本は研究開発投資の水準を高めることによって、結果的にイノベーション成果に貢献する。

3、創業者の人的資本は「実際の」研究開発投資だけでなく、「必要な」研究開発投資にも影響を与える。したがって、人的資本は、研究開発のための資金調達ギャップ(the funding gap for R&D)の軽減に必ずしも貢献しない。能力のある起業家でさえ、思うように研究開発のための資金調達ができていない。

このため、研究開発型企業に対する支援の必要性は大きい、特に、成長ポテンシャルの高い起業家に対してより重点的に支援すれば、より効率的なイノベーション実現が可能かもしれないと、加藤准教授は述べました。

講演の後は参加した会員との間で質疑応答が展開され、講演会終了後の交流会でも、活発な議論が続きました。

2015年度第1回講演会のご報告

関西ベンチャー学会は2015年度第1回講演会(全体例会)を7月に開催しました。概要は以下の通りです。

【関西ベンチャー学会 2015年度 第1回講演会】

テーマ 「行動観察」が企業を変える

日 時 7月14日(火) 午後6時30分~9時

講演会 午後6時30分~8時  交流会 午後8時~9時

場 所 備後町クラブ3階ホール(交流会は2階レストラン)

大阪市中央区備後町3-6-14アーバネックス備後町ビル

講 師 磯龍介・大阪ガスファイナンス取締役

内 容

顧客の動きなどを観察・記録して心理学的な分析を加え課題解決につなげる「行動観察」。従来の調査手法にとらわれないアプローチで、対象者が意識していない潜在的なニーズなどを掘り起こし、新しい商品やサービスを生み出すことのできる方法として、現在注目を集めています。この「企業を変える」可能性のある「行動観察」について、大阪ガス行動観察研究所の代表常務取締役事業本部長として、「行動観察力育成講座」の講師やセミナー講師などを務められた磯龍介さん(現・大阪ガスファイナンス取締役)に伺いました。

磯さんは1983年に関西学院大学法学部卒業後、大阪ガスに入社し、2001年に大阪ガス行動観察研究所の前身である株式会社エルネットに出向しました。このエルネットにおけるマーケットリサーチ業務の中で、行動観察が商品開発やサービス開発にとって極めて有効な手法になりうることを見出したと、同社で行動観察の研究が始まったいきさつを話しました。

磯さんによると、行動観察の最大の特長は、アンケートやインタビューでは得られない「言語化されない事実・情報」が得られること。「企業も顧客も気づかなかった価値を把握できることが、これまでの手法とは違う点」と磯さんは語りました。そのうえで磯さんは、行動観察の実施プロセスとして、発見→再構成→着想→創造→実現という、5つのステップを踏んで新しい価値やイノベーションにつながるソリューションの提供に至るという、具体的な手順を示し、重要なのは現場で発見し収集した事実を、新たな枠組みで解釈し(リフレーム)インサイト(洞察)を導き出すという再構成であるということも強調しました。

また、磯さんは、行動観察の手法は商品やサービスの開発というマーケティングリサーチの手法としてだけでなく、作業現場のイノベーションなどサービスサイエンスの手法としても注目されると述べ、「現場」に行って事実を把握すること、場にいる人々の「個」を深く理解するよう務めることなどが、重要なポイントであると指摘しました。さらに、気をつけなければならないのは、先入観を持つことで、バイアスがかかると本当の姿が見えなくなるという例を、映像を使いながら解説。「思い込み、決め付けを現場に持ち込んではならない」と締めくくりました。

講演後は関西ベンチャー学会の林茂樹会長の司会で、会場参加者を交えた質疑応答を展開。引き続いて開かれた交流会でも、活発な議論が続きました。

 

2014年度第2回講演会のご報告

関西ベンチャー学会は2014年度第2回講演会(全体例会)を11月に開催しました。概要は以下の通りです。

【関西ベンチャー学会 2014年度 第2回講演会】

テーマ  「関西発のイノベーションとは何か~2014年度版関西経済白書を読み解く」

日 時  11月18日(火) 午後6時30分~9時

講演会 午後6時30分~8時  交流会 午後8時~9時

場 所  備後町クラブ3階ホール(交流会は2階レストラン)

講 師  小川一夫・大阪大学社会経済研究所所長・教授

「イノベーションのための処方箋」

角勝・大阪市経済戦略局イノベーション企画担当課長代理

「グローバルイノベーション創出支援事業ハッカソンについて」

内 容

関西経済の再活性化のためには、独自のイノベーションの展開が喫緊の課題です。2014年度版関西経済白書でも、関西発のイノベーションの必要性がクローズアップされています。そこで今回は、関西経済白書の編集に当たられた大阪大学社会経済研究所の小川一夫所長(アジア太平洋研究所主席研究員・リサーチリーダー)に、白書の内容を元に、関西におけるイノベーションの課題を語っていただいたほか、イノベーションを生み出すための1つの取り組み例として、大阪市が運営する「大阪イノベーションハブ」の活動を、大阪市経済戦略局課長代理の角勝さんに報告していただきました。

最初に登壇した小川所長は、関西経済の長期低迷が続いている理由として、全要素生産性の伸びが他の地域より低いことを上げ、その中でも生産性を伸ばしている企業があるとして、「これらの企業がなぜ高い生産性の伸びを達成できているのか、その秘訣を探ることで、関西経済再活性化のヒントが得られる」と述べました。そして、リーマンショック後の2009年度から2011年度にかけて、生産性を伸ばすことができた企業にヒアリング調査をした結果、「これらの企業は、①多岐にわたる取り組みを通じてイノベーションを生み出している②人材の多様性を成長につなげる仕組みを持っている、すなわち、グローバル人材や女性の活用、異なる部署との連携などを進めている③企業理念を社員に浸透させている④オープンイノベーションの進展や大学との連携強化などで外部資源を有効活用し、海外市場も積極開拓している――などの共通項がある」と結論付けました。その上で、これらの調査結果から浮かび上がる課題として、「イノベーションを創出し、全要素生産性を上げるため、留学生の活用などでグローバル人材が活躍できる環境を整えること、子供を持つ女性が安心して働ける環境をつくること、さらに、強い技術力を持つ中小企業を生かせる仕組みをつくることが重要」と語りました。

続いて登壇した角氏は、JR大阪駅北側のグランフロント大阪・ナレッジキャピタル内に大阪市が開設した「大阪イノベーションハブ」を紹介。「イノベーションを起こしたいという理念を持った人なら誰でも利用できる開かれた施設」と強調しました。そして、同施設の事業の1つである「ハッカソン関西」の内容についての報告に移りました。「ハッカソン」とは、ITのエキスパートである「ハッカー」と「マラソン」を組み合わせた造語で、参加するチームが数日間、集中して新しいアプリやサービスなどを生み出す作業に集中するイベントのこと。角氏は「関西では特に、得意のものづくり技術とITを組み合わせて、新たな製品を生み出す『ものアプリハッカソン』と呼ぶ取り組みをしている」と語り、これまでに「ハッカソン」で生まれた製品を、使い方の実演を交えながら、成果の具体例として紹介しました。そして「このプロジェクトを海外にも発信していきたい」と、グローバルイノベーション創出への意気込みを語り、「そのための土台となる、個人や団体の参加メンバーをもっと拡大したい」と述べました。

講演会終了後の交流会では、参加者同士の活発な情報交換が行われました。

 

2014年度第1回講演会のご報告

関西ベンチャー学会は2014年度の第1回講演会(全体例会)を6月に開催しました。新聞やテレビなどで話題を集め、レストランも連日超満員となっている近畿大学の養殖マグロビジネスがなぜ成功したのか。かつて大学発ベンチャー「アーマリン近大」の取締役としてブランド化を推進した仕掛け人の大久保良雄さん(現・株式会社キャリア特待館代表取締役)に伺いました。講演後は関西ベンチャー学会の林茂樹会長の司会で、会場参加者を交えた質疑応答を展開。参加者による交流会も開催しました。

テーマ 「マグロビジネスはなぜ成功したか~近大マグロブランド誕生秘話」

日 時 2014年6月9日(月)午後6時30分~8時

場 所 備後町クラブ3階ホール(大阪市中央区備後町3-6-14アーバネックス備後町ビル)

講 師
大久保良雄・株式会社キャリア特待館代表取締役(元・アーマリン近大取締役・近畿大学水産研究所事務長)
聞き手は林茂樹・関西ベンチャー学会会長

内 容
大久保氏は1977年に三重大学農学部を卒業後、三重県経済連(現JA三重)を経て近畿大学に事務職員として入職。その後、民間企業への出向を経て95年に近畿大学水産研究所に事務長として着任しました。
大久保氏の説明によると、同研究所は48年に和歌山県白浜町に設立された臨海研究所が前身で、第2代所長の原田輝夫氏が考案した小割式網イケス養殖法によるマダイ養殖で収益を上げた実績があり、70年から水産庁の委託を受けたことをきっかけにマグロ養殖の研究を開始。補助金打ち切り後も研究を続け、32年間の試行錯誤の末に2002年6月、世界初のクロマグロ完全養殖に成功しました。
大久保氏は「事務長として着任したころは、赤字が続いていたにもかかわらず将来ビジョンが示されていなかったため、収支改善策として成魚のブランド化を提案し、販売担当を自ら申し出た。そして、販売会社の設立を計画し、アーマリン近大を設立した」と、大学発ベンチャーを立ち上げた経緯を説明。「ニーズとシーズを結びつけるため、全国を回って顧客の声を集めていたところ、たまたまある寿司店の大将の『「自分は中学しか出ていないのにこのマグロは大学を出ている』という言葉を伝え聞き、マグロに卒業証書をつけ、近大マグロというブランドで売り出すことを発案した」と、ブランド化のきっかけとなったできごとを打ち明けました。そして、「QRコードをつけて生産履歴がわかるようにしたところ、大ヒットした。この次の夢は世界に出ることだが、それは後任者に託したい」と次への期待を述べました。
さらに大久保氏はブランド戦略の基本として「①わかりやすさ②顧客の共感③可視化④ユニーク性⑤ストーリー性⑥結果検証――の6か条が重要。また、これだけ覚えただけでは何の意味もなく、積極的な行動と果敢な挑戦、深い思考が加わって、初めて戦略と呼べる」と、自らつくった戦略モデルを説明しました。そして「目的を達成するためには色々な道が無数にある。自ら方法を編み出すことが大事だ」と結びました。

2013年度の例会活動のご報告

関西ベンチャー学会は2013年度の例会(シンポジウム)を9月に開催しました。概要は以下の通りです。

【関西ベンチャー学会 2013年度シンポジウム】

テーマ 「ミャンマー、バングラデシュ・・・・ 新・新興国のビジネスチャンス」

日 時  9月30日(月) 午後6時半~9時半

講演会 午後6時半~8時半  交流会 午後8時半~9時半

場 所  大阪産業創造館・6階会議室B

講 師  藤田幸一・京都大学東南アジア研究所教授

赤畑俊一・第一コンピュータリソースグローバルサービス事業本部長

(聞き手)林茂樹・関西ベンチャー学会会長

内 容

国内市場の縮小などに直面する日本はじめ先進国は、新たな市場や生産拠点を求め、ミャンマー、バングラデシュ、ラオス、カンボジアなど新・新興国への進出を加速させています。そこで、新・新興国論に詳しい京都大学東南アジア研究所の藤田幸一教授と、新・新興国ビジネスで先行するIT企業・第一コンピュータリソースの赤畑俊一グローバルサービス事業本部長に、現状や課題などについてそれぞれ報告をいただきました。

最初に登壇した藤田教授は、まず「東アジア、東南アジア、南アジアの社会構造はそれぞれ異なっており、これらの地域のいわゆる新・新興国でベンチャービジネスを軌道に乗せるためには、日本とはどういう国かを知り、実際に現地に行って日本との文化の違いを体で理解することが重要」と強調。「文化の全く違う国でのビジネスには根性が必要であり、大阪商人の根性を受け継ぐ関西人にこそ出番がある」と語りました。

その上で、特にバングラデシュとミャンマーの2国について、「バングラデシュは階層性の強い社会で、あまり勤勉とは言えない国民性を持っている。ミャンマーは王朝時代から続く極端なトップダウン方式が浸透しており、同じ東南アジアでも、タイとは違って融通の利かない国民性がある」と、特徴を述べました。具体的には「バングラデシュは最近の経済成長率がおよそ6%に達する国となっているが、輸出の大半を縫製品に頼っている。かつて非常に低かった女性の労働参加率が1980年代半ば以降目覚しく増え、その女性たちの低賃金労働を支えに縫製業が急成長した」と解説。「まだ政治が不安定でゼネストが頻発し、治安も悪い。役人の汚職も横行している。首都ダッカの交通混雑、主要港湾のチッタゴン港の施設狭隘・老朽化、深刻な電力不足など、インフラにも様々な問題を抱えている」と問題点を指摘しながらも、「それでも海外からの投資は増えている。縫製業には広い裾野産業が存在し、発展をしているし、将来は中間管理部門の労働者の増加、一般大衆の貧困削減・購買力向上なども予想されるためだ」と期待を語りました。

ミャンマーについては「軍政から民政への移管を果たしたものの、まだ古い政治経済制度が残っており、インフラの未整備、産業基盤の弱さ、ヤンゴンの道路混雑・ホテル事情の悪さなどの問題もあるものの、多様で豊かな自然農業資源があり、中国とインドの緩衝地帯という地政学的に重要な位置に存在する国というメリットがある。豊富で案かな労働力があり、消費市場としての魅力もある」と解説。特に「今後は農業、アグロインダストリーにチャンスがある」と強調しました。

続いて登壇した赤畑氏は、自身が社長を務めるミャンマーの現地法人・ミャンマーDCRについて、「2008年に100%日本資本の企業としてヤンゴンに設立した会社。アプリケーション・ソフトウエア開発や、ミャンマーに進出した日本の大手銀行や航空会社などに向けたネットワークサービスなどを手掛けている。日本人スタッフ5名のほか、ミャンマー人スタッフが202名いるが、公用語は日本語。トップレベルの大学・大学院から優秀な人材を採用しており、入社前からIT技術や日本語の研修を実施しているため、スタッフの日本語スキルは高い」と、概要や特徴を説明しました。

日本企業としてはいち早いミャンマー進出を決断した理由については、「先に進出していた中国で人件費が高騰し、次なるオフショア開発拠点が必要となったため、高い潜在能力と将来に対する可能性を持つミャンマーに注目した」と語り、「ミャンマーは人件費が安く、当時は日本から進出している同業者がほとんどなかったため、先駆者としてのアドバンテージも得られると考えた」と述べました。さらに、「優秀な人材が集まること、親日的なこと、仏教国・農耕民族で日本人と親和性があること、インフラは未整備だかネットでの情報交換は可能なこと、人々は勤勉で仕事や将来の目標に対するモチベーションが高いこと、ミャンマー語の文法が日本ごと似ており日本語の習得が早いこと」などを、ミャンマーの人材を活用したビジネスの魅力として挙げました。

ただ、「インフラが整備されていないこと、戦力となる人材を育成するのに時間と労力がかかること、政治的なカントリーリスクが残っていること、ビジネスの自由度が制限されており、特に外資に対する各種許認可の取得に非常に時間がかかること」などのデメリットも挙げ、「改善されつつあるものの、現地で調達できるコンピューター設備やネットワーク設備が限られている」とも指摘しました。その上で「ミャンマーでビジネスを展開するためには、現地の各種組織との密接なリレーションシップ、同業他社(現地企業)との明確な住み分け、ITインフラ状況を踏まえた情報システムの確立、JETRO、ヤンゴン日本人商工会議所、ヤンゴン日本人会を含めた日本企業とのリレーションシップ、決定事項の明確化・文書化などが重要」と、ミャンマービジネスにおける留意点を強調しました。

藤田教授、赤畑本部長の報告の後は、関西ベンチャー学会の林茂樹会長の司会で、会場参加者を交えた質疑応答に移行。ミャンマー、バングラデシュの現状や特徴、投資先としての魅力、デメリットなどについて、両講師と林会長との間で突っ込んだ形の質疑応答が展開され、会場からも活発な質問が出されました。講演会終了後は、講師を交えての交流会となり、参加者同士の情報交換の輪が広がりました。

2012年度の例会活動のご報告

関西ベンチャー学会は2012年度の全体例会を、8月と11月の2回開催しました。概要は以下の通りです。

【第1回 例会概要】

テーマ 「進む医療の国際化 ~医療ツーリズムの動向~」

日 時 2012年8月3日(金) 午後6時半~8時

場 所 大学コンソーシアム大阪・ルームA

講 師 植村佳代・日本政策投資銀行産業調査部副調査役

内 容

医療ツーリズムの市場規模は拡大する傾向にあり、中でもアジアが医療ツーリスト受け入れの一大拠点になりつつあります。2012年度の第1回例会では、日本政策投資銀行産業調査部でヘルスケア部門を担当する植村佳代さんを招き、世界の医療ツーリズムの状況及びアジア地域におけるリーディングホスピタルの戦略を紹介いただくとともに、わが国の取り組み状況、課題などを語っていただきました。

植村さんは医療ツーリズムの現状について、「現在、世界約50カ国で医療ツーリズムが実施されているが、以前は新興国から先進国への渡航が主流だったのに対し、現在は先進国から新興国に向かう新たな流れが加わっている」と指摘。特に「近隣アジア諸国からより良い品質の医療を求めて渡航するツーリストなどが目立つほか、低コストの医療などを求める米国などからのツーリストもいる。これらのツーリストを受け入れる国々の多くでは、外貨獲得や内需拡大といった目的により、国策としての取り組みを実施している場合が多く、観光とセットになる場合も多い」と述べました。

中でもタイ、インド、シンガポールなどの受け入れ数増加が目立つとして、タイのバンコク病院医療センター、バムルンラード国際病院や、シンガポールのラッフルズ・メディカル・グループ、インドのアポロ病院グループなどの具体的な取り組み例を紹介。さらに、最近医療ツーリズムのマーケティング活動を強化している韓国の戦略についても触れました。そのうえで、わが国も2010年の閣議決定された「新成長戦略」に「国際医療交流の促進」が盛り込まれたことをきっかけに、医療ツーリズム促進のための体制づくりが進んでいると報告。「医療ビザ」新設や海外に向けた情報発信、医療通訳者の育成など課題は多いものの、「医療ツーリストの受け入れが進展すれば、わが国経済の発展に寄与するだけでなく、医療費の抑制で赤字経営を余儀なくされている医療機関の経営改善も期待できる。また、医療機関と自治体の連携による医療産業集積の形成は、医療ツーリストの呼び込みに効果的であるだけでなく、地域経済の活性化にもつながる」と述べました。

講演終了後は参加者との間で、活発な質疑応答が展開されました。

【第2回 例会概要】

テーマ 「守れるか海洋権益 ~資源確保戦略を問う~」

日 時 2012年11月27日(火)午後6時半~8時

場 所 大学コンソーシアム大阪・ルームA

講 師 坂元茂樹・神戸大学大学院法学研究科教授

内 容

次世代のエネルギー源として最近にわかに脚光を浴びているメタンハイドレートをはじめ、日本近海には豊富な海洋資源が眠っています。これらの海洋資源を有効に活用することができれば、日本の国力が一変する可能性もあります。また、生物の生態系に悪影響を与えない採掘技術の開発など、産業界にとっても新たなイノベーションを起こすチャンスが巡ってきます。そこで2012年度の第2回例会では、海洋権益についての第一人者である神戸大学大学院の坂元茂樹教授を招き、海洋資源獲得を巡って展開されている各国間の競争の現状と我が国の課題を語っていただきました。

坂元教授はまず、海洋資源開発事業の強化で「海洋強国」を目指す中国の戦略と、南シナ海における中国とASEAN諸国との間の領有権紛争について解説。その背景としてアジアにおけるエネルギー需要のひっ迫から、特に南シナ海の石油・天然ガス資源の重要性が高まっていることを挙げました。

また、「政府は07年の海洋基本法制定と総合海洋政策本部の設置で、海洋開発は日本経済の存立基盤であると位置付け、翌年閣議決定した海洋基本計画では当面の探査・開発の対象を石油・天然ガス、メタンハイドレート、海底熱水鉱床と決定した」と、海洋開発に関する日本政府の考え方を紹介。特に日本近海に存在するメタンハイドレートと、多くのレアメタルを含む海底熱水鉱床、コバルトリッチクラストについて、その重要性とわが国の探査活動の現状について解説しました。

そして、南シナ海だけでなく東シナ海でも資源獲得競争が熾烈になっているとして、大陸棚の境界画定を巡る日本と中国の争いを挙げ、両国は08年にこの問題を棚上げして同海域の共同開発に合意したにもかかわらず、中国は中間線の中国側海域において一方的な開発を続けていると指摘。日中は自らを「戦略的互恵関係」と位置付け、東シナ海を「紛争の海」から「協力の海」に変えることで一致したはずであり、その実現形態としての共同開発の枠組みを壊してしまったら、「どちらも資源確保の利益を得られないことに気付くべきだ」と述べました。

そのうえで、「核心的利益」という言葉で海洋資源の獲得に国力を集中し、紛争が生じると国家主権を盾に第三者による紛争解決に委ねようとしない隣国に立ち向かうため、「政府には日本の将来を見据えた海洋戦略の策定が必要である」と強調しました。

講演終了後は参加者からの質問が相次ぎ、予定時間を大幅に上回るほどの充実した内容の例会となりました。

(以上です)

 

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