講演会(2020年11月13日)開催内容のご報告

講演会(2020年11月13日)開催内容のご報告

2020年度の第2回目となる講演会(全体例会)は、日本IBM株式会社の三輪直人さんを講師にお迎えしました。三輪さんは「日本社会、関西におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進について」をテーマに、①そもそもDXとは②日本のDXの実態③DXを推進するチームの働き方――の3点にについて講演されました。所々で聴講者同士がDXへの取り組み状況などについて話し合う「体感型セッションタイム」をはさむなど、ユニークな講演でした。講演の後の質疑応答では、講師と聴講者との間に活発なやり取りがありました。以下、ご報告です。

テーマ:日本社会、関西におけるDX推進について ~周回遅れを取り戻す~
日時 2020年11月13日(金)18:30~20:00
場所 大阪産業創造館 6階 会議室A・B
講師 三輪 直人 日本IBM株式会社 グローバル・テクノロジー・サービス事業本部
テクニカルセールス事業部 部長 営業統括マネージャー

講師ご略歴 神戸市出身。情報工学修士。2007年、NTT西日本に入社。R&DにてIP電話システム開発の傍ら論文執筆や特許取得を経験。その後クラウドベンチャーへ出向しクラウドエンジニアとしてサービス企画から開発・保守までを経験。2018年より現職。

講演要旨:
日本は人口が減少に転じ、社会の構成が大きく変わっている。ビジネスも大変革期に入っている。個人の個性を重視し、一人ひとりに見合った付加価値のついたモノをつくっていかなければならない時代だ。人口増加を前提とした「前へならへ」型の生産性向上ではなく、ITを活用した「ONLY ONE」型の生産性向上を目指さなければならない。

日本企業の国際競争力は著しく低下した。かつては世界の時価総額ランキングで上位を独占していた日本企業は、現在、ベストテンにも全く入っていない。人口が減少する中で、どうグローバルで戦っていくかが課題だ。いま世界の中心にいる企業は、大量のコンテンツとユーザーをデジタル技術を活用することで結びつけるビジネスモデルを確立している。変化の激しいユーザーの要求にタイムリーに応える開発スピードが求められる。ビジネスプロセスをデジタル化する「デジタイゼーション」ではなく、ビジネスモデルそのものを変革する「デジタライゼーション」が必要である。DXとはその「デジタライゼーション」が社会全体に広がっていくことだ。

日本でも例えば、データを活用して安全・安心なクルマ社会を実現しようとする動き、航空会社の乗務員や整備士などの記録を電子化する動き、精神科医療の高位平準化を図る動きなど、DXを進める動きが見られる。自動運転もレベル3まで解禁になった。しかし、うまくいっていない例も多い。変革を起こしたいがITを活用したビジョンが描けない経営者や、外部ベンダーと勝手に新規ビジネスを立ち上げるが変革には至らない事業部門からのプレッシャーがIT部門に集中している。

日本ではIT人材の72%がベンダー企業に、28%がユーザー企業に属しているのに対し、米国では逆に35%がベンダー企業、65%がユーザー企業に属している。欧米のソフトウエア開発は内製が多く、日本のソフト開発は外注が多い。これが日本と欧米の違いである。このため、日本政府も動き出した。例えば経済産業省が進める「DX格付」。先進的なDX企業を育て、国内外から人材や投資が集まりやすい環境をつくるのが狙いである。

DXを支えるインフラは進化している。流れは既存システムからクラウドの活用に進んでいる。クラウドの活用が進むと、家でも仕事ができるようになる。リモートワークへのシフト。これは元に戻せない流れだ。場所に関係なく仕事ができる、時間も調整しやすい、参加者間の力関係が現れにくいなど、リモートワークによるコラボレーションには多くのメリットがある。今後は日本でもシステム開発や運用など、多くの業務がリモートワークにシフトしていくだろう。ビデオ会議や、ファイル共有、チャットなどのツールを活用し、生産性を最大化したい。ただし、ネットワークとセキュリティーの強化も忘れてはならない。

リモートワーク文化をうまく進める上でのテクニックと注意点は、以下の通りだ。①心理的安全性の確保②ビジョンやゴールを伝える機会を増やす③報告フォーマットを決め、成果を見える化する④コミュニケーションの活性化が起きる仕組みを導入する⑤相手の環境を思いやる⑥意図的に休憩時間をつくる――である。まずは経営層・マネジメント層がDXとITに関して勉強することが 大事。そして業務プロセスの中でデジタイゼーションできそうな箇所から探してみることだ。人選して実施してみると社員の意識が変わってくる。
まず、社内でDXを推進できそうな20歳~40歳代の人材を発掘する。その人々に期待している旨を伝えて、プロジェクトをつくる。そして、今の会社・組織の在るべき姿と変革の実行可能性をプロジェクトにレポートしてもらい、小規模でいいのでプロジェクトを実行する。こうした手順を踏みたい。プロジェクトの取り組みを経営層自らが見える化して、推進状況を全体に報告し続ける。実績ができたらプロジェクトチームを評価し社外に発信していく。こうしたことも経営層に望みたい。

以上です

カテゴリー: 事務局からのお知らせ   パーマリンク

コメントは受け付けていません。