第42回医療・福祉研究部会のご報告
第42回医療・福祉研究部会が、8月7日(金)午後6時30分から、大阪市中央区の備後町クラブ3階会議室で開催され、株式会社マイルストーン代表取締役の谷川真理子さん(総合旅行業務取扱管理者)に「中国人を対象とした医療ツーリズムの取組み」というテーマでお話をいただきました。
講演要旨は次の通りです。
発表要旨
日本観光に訪れる中国人観光客が急増し、そのニーズも多様化していくなかで、中国人の訪日医療ツーリズムがいま非常に注目を集めています。中でも、人間ドックと観光をセットにした形のツアーの需要が、中国人富裕層の間で非常に高まっています。
このような状況をふまえて、検診と観光の切り口から情報をまとめ、「中国人を対象とした医療ツーリズムの取組み」のテーマで講演を行いました。
報道資料や書籍、インターネットからの情報にとどまらず、中国や日本に暮らす中国人から得た情報や、視察ツアーで訪れた中国人顧客の声なども盛り込んだ内容に、参加者からは、「かなり生々しい話が聞けた」との感想が寄せられました。
概要は以下のとおりです。
日本のインバウンド市場概況:
拡大するインバウンド市場。政府の成長戦略では、訪日外国人数2020年に2000万人を目標としており、うち中国人は600万人(全体の3割)と想定。
また、訪日中国人のニーズは多様化してきており、今後は個人化がより進み、テーマ性や高付加価値の旅行が求められる。中でも、医療、ヘルスケア、美容の分野はかなりポテンシャルが高い。
日本における中国人対象医療ツーリズム:
背景には、中国の経済発展に伴う富裕層増大や、中国の医療事情、日本の医療機関の受け入れ状況の変化等がある。
市場を把握するデータの一例として、医療ビザの創設以来、発給数は中国が首位を維持、特に2014年は急激な伸びが見られることなどがあげられる。
また、意義としては、「日本の医療資源の有効活用、国際展開」の側面と、「インバウンド観光客誘致、地方創生」の側面から、医療ツーリズムを事業として取り組むことは非常に意義があると考えられる。
一方で課題も多く、医療機関、コーディネート機関、現地旅行社が一体となって情報共有しながら課題解決にあたらなければならない。
中国の医療制度及び医療市場:
中国では、保険制度の整備の遅れや、都市間・地域間格差、営利優先の病院経営による過剰投薬や過剰検査で医療費が高いことなど、よりよい医療を求める国民のニーズと乖離が激しい。このような社会事情から、富裕層は高水準の医療サービスを海外に求める傾向にある。中国都市部でPET-CTを含む検診費用の相場は20万円~34万円程度。(日本円換算)
また、ネット社会である中国では、検診ポータルサイトや医療機関のポータルサイト、医療・健康に関する情報サイトなどが多数存在する。国民の健康への意識も急激に高まっている。
中国人顧客のニーズ:
視察ツアー(北京で医療ツーリズムの募集を検討している企業経営者)での生の声。
日本への検診ツアーはいま旬であり、マーケットは大きいが参入も激しい。検査機器や検査内容での差別化、多様なニーズ(豊富なオプション、融通性等)への対応、病院の専属契約または貸し切り対応などが求められる。
また、検診のみでなく治療ツアーの取組みを想像以上に真剣に考えている。
実務面では、医療と観光をワンストップで手配できる日本の業者を求めている。
増大するニーズに応えられる施設と体制(ハード、ソフトとも)を、中国資本が日本の地方都市に作る動きも出てきている。
当社の現状と今後の展望:
ビジネススキーム、日本側・中国側の提携機関、視察ツアー実績及び今後の見込み、今後の展開・方向性等について、現状の説明と、今後の展望を語った。
【弊社の理念】
◆日本の優れた医療資源、美容関連素材を有効に活用し、日中間の相互理解の促進と深化につなげる。
◆中国人を対象とした医療ツーリズムを事業として行うことで、関西を中心とした医療産業や観光産業の成長に貢献する。
以上です。