講演会(2019年12月5日)開催内容のご報告

講演会(2019年12月5日)開催内容のご報告

今年度の第1回目となる講演会(全体例会)は、MBSホールディングスの河内一友・相談役最高顧問を講師にお迎えしました。河内相談役最高顧問は毎日放送の経営トップを長く務められ、関西の放送界をリードしてこられた方です。その河内さんに①放送界の現状②IT(情報技術)・AI(人工知能)の動向③今後IT・AIにどのように向き合っていくか④5年後の放送界――などについて語っていただきました。ご講演の後は質疑応答や交流会で、講師と参加者との間に活発なやり取りがありました。以下、ご報告です。

テーマ:放送業界におけるIT・AIの動向について~MBS(毎日放送)の場合~
日時:2019年12月5日(木)18:30~20:00(終了後、交流会を開催)
場所:備後町クラブ3階ホール(交流会は2階レストラン)
講師:河内一友・MBSホールディングス相談役最高顧問
(質疑応答の司会は大野長八常任理事)

講演要旨:
日本の人々がメディアにどの程度接触しているか、接触時間の推移を見ると、総接触時間は年々増加している。テレビはほぼ横ばいだが、インターネットの伸びが目立つ。媒体別の広告費の推移を見ても、ネット広告が急伸しており、2018年はテレビ広告に追いついた。19年はネット広告がテレビ広告を上回るだろう。すでに米国では、13年にネット広告が地上波テレビ広告を上回っている。ただ、テレビは近畿圏で放送する番組が10%の視聴率を取ると、208万人が見た計算にになる。ラジオも2~3%の聴取率を取れば、およそ40~60万人が聴いたことになる。テレビ・ラジオの影響力は大きい。

放送局では技術革新が進むだろう。現在トレンドとなっている新技術としてはIP(インターネット・プロトコル)、クラウド、AI、5G(次世代通信規格)などが挙げられるが、これらの新技術を取り入れれば①機器や設備が安価②大容量のデータを扱うことが可能③省力化――などのメリットが得られる。ただ、①企画が未完成②対応機器がそろっていない③セキュリティ――などの課題もある。

IP化やクラウド化などの技術革新が進むと、誰でも放送対応が可能となるので、既存の放送局にとっては、番組の信頼性やクォリティーがさらに重要になる。営業面では視聴者の細かいデータを活用したターゲティング広告で、売り上げを増やすことが期待できるだろう。課題はIPに関する知識や理解がある人材の確保である。

IP化、クラウド化を進める時期は、放送局の心臓部と言えるマスターを更新するタイミングが候補となる。NHKの新放送センター建設も1つのポイントだ。2025年に運用を開始する予定で、同局が採用する仕様によりメーカーの方向性がそろっていくかもしれない。民放各局はばらばらに対応するのではなく、民放連で調整するなどして、共同発注によりコスト低減につなげることができないだろうか。

一方、AIへの取り組みは、現在人力で行っている作業を自動化できるメリットがある。局員の負担軽減を「働き方改革」につなげることができる。例えば顔認証や背番号などの認識で、「名前」や「選手名・所属先」を自動でスーパーとして流せるだろう。字幕スーパーをAIを活用して流すことも可能だ。

今後、IT・AIにどのように向き合っていくべきか。意識しなければならないのは「良い製品は必ずしも良い製品にあらず」ということだ。性能だけでなく、デザイン性なども要求される。視野を広げるため、教養を積むべきだ。リベラルアーツの重要性を訴えたい。5年後の放送界は、業界再編が加速しているだろう。ベンチャー企業にとってはチャンスだ。特にラジオはベンチャー進出の余地が大きい。放送界が70年近く保ってきた価値観は通用しなくなる。

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