2019年度講演会(7月12日)のご報告

2019年度講演会(7月12日)のご報告

今年度講演会(全体例会)は、三重県多気町に本社を置く製薬会社・万協製薬の松浦信男社長を講師にお迎えし、これまでの歩みや経営哲学などを語っていただきました。ご講演の後は質疑応答や交流会で、講師と参加者との間に活発なやり取りがありました。以下ご報告です。

テーマ 「人に必要とされる会社をつくる」
日時 7月12日(金)18:30~20:00(終了後、交流会を開催)
場所 備後町クラブ3階ホール(交流会は2階レストラン)
講師 松浦信男・万協製薬株式会社代表取締役社長
(質疑応答の司会は定藤繁樹会長)

万協製薬株式会社の概要

住所=三重県多気郡多気町仁田725-1
代表取締役=松浦信男
設立=1960年3月
従業員数=170名
資本金=4000万円
業務内容=外用薬(クリーム剤、軟膏剤、液剤)専門の受託メーカー
(以上、万協製薬HPより)

講師プロフィル

松浦社長は、父親が創業した神戸市の万協製薬に入社後、阪神・淡路大震災により被災。1996年に三重県多気町で再スタートした万協製薬の社長に就任し、会社をゼロの状態から再建して年商40億円を超える企業に急成長させました。中小企業部門では初めて日本経営品質賞を2度受賞するなど、数々の賞を受賞している、ベンチャー精神あふれる経営者です。多気町工業会会長、多気町商工会会長など地元経済界の要職も務め、まちづくりにも力を入れています。

講演要旨

震災で本社・工場が全壊し全てを失ったが、私のベンチャースピリットはこの震災体験から生まれた。被害者意識をなくし、自分から笑うことが大事。笑顔は人が示せる最大限の優しさである。

私たちが最上位に共有すべき価値観は、社員、会社のそれぞれの価値を平等に尊重し高めていくことで社会に貢献すること、社員が会社にとって最も重要な財産であるという信念に基づき行動すること――である。この価値観に基づき①社業を通じお客様と社会に貢献する②会社の発展と共に従業員の心物両面向上を追求する③お客様のニーズにお応えする最高水準の技術と製品の提供により業界No1カンパニーを目指す④常に誠実を旨とし地域社会の信頼を得るよう努める⑤独創性を持ち迅速・確実・安価・快適であることを最高の価値基準とする――という5つの企業理念を掲げた。さらに、7つの行動指針と、11の思考指針を具体的に社員に示している。Let’s Build SUPER TEAM。これが今年度の万協製薬の全社スローガンだ。

震災時に私は「自分以外誰も万協製薬を必要としていない」という「圧倒的な孤独感」に苛まれた。私はそれが苦しくて、たった1人で神戸を出て会社を建て直した。そして、自社ブランドを捨てて、「相手先ブランド開発・製造アウトソーシングサービス業」に転身した。今思えば、この「逆境」こそが私を「執念と忍耐」のあるアントレプレナーに育てたと考えている。

現在、三重県内に工場4カ所を持ち、顧客110社、製造品目300以上、年間総製造個数3500万個、年間新製品品目は約50種類に上る。万協製薬の成功の理由は、①スキンケアの技術ケアと開発に特化してマーケティングは顧客に任せる分業式としたこと②顧客との共同開発を重視して積極的な製品開発を続け、主要技術は自社開発することで顧客の囲い込みを行ったこと③高収益を背景とした低利融資による積極的な設備増強を続けていること④組織の全体性を重視してビジョンを明確にしたこと⑤「社員エンパワーメント」(情報公開と権限委譲)を徹底して行ったこと――である。

現在は2012年に設立したバンキョ―ホールディンググループに6つの会社が参加、海外事業や医療情報誌発刊事業など、幅広い事業を展開している。また、3万体以上のフィギュアを集めたフィギュア博物館を工場内に開設し、家族で楽しめる「五桂池ふるさと村」の経営にも携わるなどするなど、観光によるまちづくりにも力を入れている。

日本の製薬会社数はここ20年ほどで激減している。一方、海外からの医薬品のシェアはここ15年ほどで急増、明らかな輸入超となっている。こうした厳しい環境下で生き残っていくため、開発製造型ODMアウトソーシングサービスを海外でも展開することを視野に入れている。これからの日本企業は、生産性向上のため、社員のエンゲージメント(仕事への熱意度)を上げていくことが重要だ。リーダーは社員が「共感できる何か」を仕事の中で発信していくべきである。顧客満足や社員満足を上げるだけでは、本来の組織成果は発揮できない。組織に対するファンを増やすような「ファンマーケティング」がこれからのビジネスの主流となる。

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