第13回年次大会のご報告

関西ベンチャー学会 第13回年次大会

「未来を拓くソーシャルベンチャーへの期待」

2014年関西ベンチャー学会の第13回年次大会が、2014年3月16日、関西学院大学大阪梅田キャンパスで開催されました。午前中の会員総会、会員研究発表に続いて、午後から基調講演、パネルディスカッション、学生ビジネスプラン発表会が行われ、会員研究発表では、知的財産・マーケティング戦略などに関する研究成果が発表されました。午後の基調講演では、ホームレスの人たちが販売する雑誌「ビッグイシュー日本版」を発行している(有)ビッグイシュー日本の佐野章二代表が登壇。企業としてこの事業を推進する意義などについて語りました。パネルディスカッションでは佐野代表に加え、近畿労働金庫地域共生推進部の法橋聡部長、(株)プラスリジョンの福井佑実子代表取締役も登壇し、林茂樹関西ベンチャー学会会長による司会進行で、ソーシャルベンチャーを巡る現状と課題などについて議論しました。学生ビジネスプラン発表会では、関西の5つの大学の学生たちがビジネスプランを発表。大阪市立大学大学院の小笠原恭子さんが最優秀賞に輝きました。夕方に開催された懇親会では、会員・非会員を含めた参加者に学生たちも加わり、交流の輪がいくつもできました。

[ 趣 旨 ]

現代社会には、貧困、格差、教育、環境保護、高齢者・障害者の介護・福祉から子育て支援、まちづくり等に至るまで、多種多様な新たな社会的課題が顕在化しつつあり、これらの社会的課題をビジネスとして解決するソーシャルベンチャーや社会起業家への期待が高まっています。ボランティア活動や行政による補助金に依存する従来型でなく、優れた事業モデル、ノウハウ・技術の蓄積、有効なマーケティング活動、多様な資金調達や有能な人材の確保、効果的な財務活動や組織マネジメントを取り入れた持続可能なソーシャルビジネスを育成する必要があります。今回の年次大会は、この分野で優れた業績を収めている企業経営者による基調講演とパネルディスカッションを中心に構成し、ソーシャルビジネスのあり方や成功要因、新たな可能性について探求してまいります。

[大会プログラム ]

日 時 2014年3月16日(日) 10時30分開会

会 場 関西学院大学大阪梅田キャンパス

10:30 会長挨拶、主催校挨拶

10:35 関西ベンチャー学会会員総会

11:00 会員研究発表
開始・終了宣言:定藤大会実行委員長

*研究発表1* コメンテータ:釣島平三郎(太成大学)

①11:00~11:25
北真収・岡山大学大学院社会文化科学研究科教授
ベンチャー創業期の信頼構築の糸口―参入価格設定のケース―

②11:30~11:55
寺地洋之・大阪工業大学建築学科准教授
宮脇一・情報工房株式会社代表取締役
北村光司・Seiju 国際知財事務所所長弁理士
下出一・株式会社サピエンティスト代表取締役
知財の強み・弱みと顧客ターゲットの組み合わせに着目した知財評価技法に関する考察

*研究発表2* コメンテータ:文能照之(近畿大学)

①11:00~11:25
名取隆・立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科教授
中小企業のウェブサイトマーケティングの効果と課題

②11:30~11:55
大野長八・大野アソシエーツ代表
高齢化社会と女性の時代・事例研究・女性専用フィットネス・カーブス

12:00 昼食休憩(理事会)

13:00 基調講演

講師:ビッグイシュー日本代表 佐野章二氏

テーマ:「ホームレスをビジネスパートナーにする―ビッグイシュー10年の試みを通して―」

佐野章二氏プロフィール

1941年大阪生まれ。(有)ビッグイシュー日本共同代表。大学職員、都市問題コンサルタント事務所、地域調査計画研究所の開設を経て、2003年から現職。07年にはNPO法人「ビッグイシュー基金」を設立、理事長兼務。2003年9月に雑誌『ビッグイシュー日本版』創刊現在235号発売中。独立事務所時代にはNPO法策定のための基礎調査や制定作業を行う。2010~11年内閣府「新しい公共円卓会議」委員を務める。

佐野氏講演概

基調講演を行った佐野章二氏は、ホームレスの人たちが販売する雑誌「ビッグイシュー日本版」を2003年9月に創刊しました。現在は全国16都市で150人近い人が販売しています。累計発行部数はおよそ600万冊に達しています。佐野氏は「日本におけるホームレス問題は失業問題。仕事がないから住居もなくなり、人とのきずなもなくなって孤立してしまう。ホームレスにしかできない仕事をつくれば、これらの人たちは自立できるのではないか」と考えたことがきっかけだったと語り、NPOではなく企業として立ち上げたのは「事業性を持たせ大きくすることで、ホームレスの人たちの仕事をたくさんつくりたい」という思いからだったと説明しました。また、「この事業には①若者の活字離れが進んでいる②雑誌の路上販売の文化がない③無料の情報が多い④ホームレスからは買わない――という四重苦があり、当初人からは絶対に失敗すると言われていた」ものの、女性が多く買ってくれたり、路上販売に対する規制も「移動販売」ということでクリアしたりといったことで、継続ができていると語りました。そして佐野氏は「ホームレスの人たちの自立を市民がサポートするプロジェクトとして立ち上げた認定NPO法人・ビッグイシュー基金と、会社組織のビッグイシュー日本が車の両輪となり、自立への支援を強化。失敗した人たちがもう一度チャンスを得て立ち上がる社会をつくるため、ホームレスの人たちとパートナーを組んで活動を続けたい」と結びました。

14:00 パネルディスカッション

テーマ:「未来を拓くソーシャルベンチャーへの期待」

コーディネーター:林茂樹(大阪工業大学知的財産学部教授)

パネリスト:
ビッグイシュー日本代表 佐野章二氏
近畿労働金庫地域共生推進部部長 法橋 聡氏
(株)プラスリジョン代表取締役 福井佑実子氏

法橋 聡氏プロフィール(2014年2月末)

1999年から約2年間、近畿ろうきんからNPOへの出向経験を持つ。意思のあるお金をつないで地域に循環させる「社会的金融」を目指して近畿圏を東奔西走してきた。これまで、大阪府「地域福祉支援計画推進委員会」委員、神戸市「ソーシャルベンチャーアワード」委員、内閣府「新しい公共支援事業・運営会議」委員などにも携わる。

福井佑実子氏プロフィール

民間企業、国立大学産学連携組織勤務(産業クラスター内ネットワーキングを担当)を経て現職。社名プラスリジョンには、常に「プラスする」のは「リジョン(融合)」の視点で、という活動方針を込めている。「融合」をキーワードに分野横断的ネットワークを活かしながら障害のある人の働く場づくりを事業的手法て?確立することをめざす。農業分野との融合事例として、「オニオン・キャラメリゼ(玉葱飴色炒め)」のプロデュース実績がある。ETIC.主催STYLE2004入賞(2004年)、NEC社会起業塾6期生(2007年)、SVP東京 協働採択(2009年)大阪府第4次福祉計画策定委員(2010~2011年)農林水産省6次産業化プランナー(2012年~)、ユニバーサル社会づくり賞・兵庫県知事賞(2013年)

15:10 休憩

15:20 学生ビジネスプラン発表会

司会 宮田由紀夫(関西学院大学)
審査委員長 三根早苗(㈲パワーエンハンスメント代表取締役)
審査委員 大野長八(大野アソシエーツ代表)、宮田由紀夫(関西学院大学)

①15:20~15:35 神中智博(関西学院大学国際学部) E-Food 東南アジアにおける食の安全と環境対策に取り組む

②15:35~15:50 松浦麻奈未 出店純一 野田勝也(大阪経済大学経営情報学部) 受験・就職活動支援ポートフォリオサービス~ユーザー属性を踏まえた広告ビジネスの提案~

③15:50~16:05 小松史典 吉田竜也 池本さやか 浦崎雄太郎(近畿大学経営学部) 茶カスに秘めた可能性

④16:05~16:20 仲村厚輝(追手門学院大学経営学部) SMASHION

⑤16:20~16:35 小笠原恭子(大阪市立大学大学院文学研究科教育学専修) 障害者に経済的自立を!-働く場の拡充-

16:35 閉会挨拶 定藤大会実行委員長

17:00 懇親会(新阪急ホテルアネックス1階クレール)

司会:宮田常任理事
挨拶・乾杯 林 会長
学生ビジネスプラン授賞式 林会長
受賞式の司会:宮田常任理事
賞状授与:林会長
次年度開催校挨拶:関西大学

19:00  大会閉会挨拶 :定藤大会実行委員長

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