CB・NPO部会

第10回 CB・NPO研究部会例会概要

開催要領

とき・ところ

日時:2002年5月25日 15:00〜
場所:大阪産業創造館17F B室

内容

講師:一橋大学大学院商学研究科博士後期課程 経営学専攻

東京都府中市保健福祉部生活援護課  大室悦賀氏

主題 : 『ソーシャル・イノベーションとソーシャル・エンタープライズの関係』

イギリス、アメリカでは、NPOの事業化が構造改革を助けた。

  社会的な革新をもたらすソーシャル・エンタープライズの起業促す。


 大室悦賀氏は、府中市の職員と一橋大学大学院のドクターコースでの研究を両立されている会員である。東京から来阪されるので、開始時間がレギュラーとは違った。報告は、学問研究の立場、理論的な視点からの提言であった。

 “ソーシャル・イノベーション”−社会的な成果をもたらす革新が起こり得るようなNPOと営利企業の境界領域に存在するようになった“ソーシャル・エンタープライズ”(例えば事業化されたNPO法人)との関係を機能、構造から明らかにされた。社会革新に目標を置いた構想の大きな論である。

   ソーシャル・エンタープライズとは、報告者によると、「本業として社会的サービスの供給や社会におけるさまざまな問題への取り組みとビジネスを一致させるイノベイテブな活動を行い、基本的に社会への貢献を目的とした民間企業である。」と説明されている。耳慣れないので理解しにくい概念かもしれないが、政府セクターが提供してきた社会的財・サービスを肩代わりするような企業もその一つであり、これまで供給されていなかった社会的財・サービスを供給する企業も登場してくる。この事例として、(株)安全センターの緊急通報バッジとオペレーティング・システムを挙げられていた。

 NPO法人から株式会社に進展した事業などケーススタディの紹介が豊富。「ソーシャル・イノベーションとソーシャル・エンタープライズの関係」を分析するために、イギリス、ドイツ、アメリカなどでの社会背景、資金、学問理論などの基礎研究にも言及され、日本との基盤の違いが痛感された。報告者の理論展開の核心となる後半部分について、要約しておきたい。

 「イノベーションの誘因」「イノベーションの普及」「イノベーションの進化」では、@S字カーブ、A相互依存性、Bドミナントデザイン、C経路依存性などのイノベーション力学を問題解決策として示し、制度依存のみではなく、技術、サービスの品質向上までも戦略に入れることを指摘している。

 「イノベーションと企業間システム」「一般イノベーションとの相違点」を論じた後、「まとめ」に入られた。

 日本において事業型NPOが多く見られない理由を次のようにまとめておられる。「@NPOが税控除の対象になっていないため、営利企業との差別化がしにくい、ANPOが金儲けをするのはけしからんという風潮、B総会の意志決定に依存しているために、乗っ取りの可能性」などの現況を挙げられた。

初参加の都市問題研究家の方が、「いきなり日本のNPOのネガティブな側面を話され驚いた」いう意見を出された。報告が辛口の現状認識であるからだろう。毎回のテーマは、日本のNPO育成の理論を構築するために、どのように取り組めばよいのかという的確な手助けとなったと思われる。

 
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