教材開発研究部会・第三回準備会

ケース・メソッド体験


感想 山名武史  近藤健二  塩沢由典  磯部研二

開催要項

2002年1月26日土曜日 
午前10時から午後1時まで
京都・ASTEMビル最上階の会議室
テーマ「ケース・メソッドを初体験する」
インストラクタ 柳原範夫氏・更田誠氏
参加者 ケース参加者 15名 

模様

当日、講師予定の柳原先生が風邪で臥せってしまい、急遽、更田誠氏が師範代となり、ケース・メソッドを体験することになった。

まず、ハーバード大学ビジネス・スクールHBSのケース・メソッドの歴史から。ビジネス・スクール開始のころの学院長が法学者で、法学の方のケース研究がケース・メソッドの始まりという。HBSのMBAコースでは、2年間に800本近いケースを経験する。高木晴夫氏によれば、ケース・メソッドはがつこう教育に対し「21世紀の教育方法」を示唆しているという。そのキーワードは「個の尊重」「関係性による創造」。学生によるディスカッションを中心とする教育という点は、知識注入型の教育とはたしかに大きく飛躍している。

ケース・メソッドに関する簡単な説明の後、更田さんが「おたべ」のケースを声を出して読み、そのあと3チームに別れてデイスカッションに入った。「おたべ」は、商標そのものでもあり、みなよく知った商品であり、議論しやすかったとおもう。ただ、逆に、ケースに書かれていないいろいろな知識が使われることになり、ケース研究の純粋性は失われたかもしれない。

1時間半程度のデイスカッションのあと、柳原先生が風邪を冒して出てここられ、まず全般的な解説、3チームからの報告、ついでみなで討論をした。

なお、「おたべ」のケースはここに公開できないが、当日だされた設問は以下の通り。
1.このケースを読んで、あなたは株式会社おたべについて、どのような印象をもたれましたか。
2.お菓子には、一版に家庭用、お土産用、贈答用の3種類があります。マーケティング戦略からみて、お土産菓子と贈答用菓子の相違点について述べなさい。
3.おたべのマーケティング戦略の特質について述べなさい。
4.あなたがおたべの社長であれば、今後いかなる戦略を展開しますか。
(塩沢記)

ケース体験は2時で切りあげて、柳原先生と更田氏・考本氏は、キャンパス・プラザ京都へ。残りの数人は、近くのうどん屋にいき、昼食をかねた反省会。ここで、次回は、西京高校のビジネス課程の計画案を討論することになりました。次回日程は未定。
ページ・トップへ


以下は、参加者のみなさんの感想です。



指導者の力量が問題

山名武史

だれでも親近感を持てるわかりやすいケースと柳原先生の熱気溢れるご指導により、楽しい勉強をさせていただきました。今回1ケースだけの体験からケースメソッドに対する意見を申し述べることは僭越ですが、ケースメソッドの効果は指導教官の力量に大きく左右されると思います。ケースの作成者が今回のように直接指導されれば理想的ですが、与えられたケースを教材としてどこまで迫力のある起業家教育が可能か、いささか疑問に思う次第です。
ページ・トップへ


経営者教育の必要を実感

近藤健二

大野長八氏も最近「経営者教育の必要」をよく説いておられますが、私も「ナビゲーター経験4か月」にして、ようやくそう思うようになりました。

先日の「おたべのケース」によるケースメソッド体験、同じく(財)社会経済生産性本部でのカリキュラムで3例ほどハーバードのものを討論した体験があり、それなりに有効な方法との認識を持っていましたが、日本における実例をもとにした「ケース」で大変貴重なものと、感謝しながら、参加いたしておりました。当日、急ぎの仕事を後に抱えておりましたので、先に失礼して、心残りでおりました。
ページ・トップへ


討論から見えてきました

塩沢由典

設問の1から3までは、最後の設問「あなたがおたべの社長であれば、今後いかなる戦略を展開しますか。」を考えるために用意されたものとおもいます。最初にこの設問を提示されたときは、いったいどういう戦略があるのか、皆目、見当もつきませんでした。でも、1時間も議論しているうちに、みなが八つ橋・生八つ橋にもっているイメージ、どんなときに買われているか、今後の長期を考えたとき、どんな弱点があるかなどが、だんだんに見えてきました。

わたしの設問に対する「答え」を書いておきます。

1.株式会社おたべについて
餡入り生八つ橋はあまりすきでない。ただ、生八つ橋はすきでよく食べている。生八つ橋を商品化したのは偉大な発明。いくつかのブランドを試したが、おたべの生八つ橋が一番うまい。 (生八つ橋は、「おたべ」以前にあつたのではないか。わたしは、1961年の修学旅行で、旅館についたとき、食べた記憶がある。ただ、一般に市販されたものではないかもしれない。このあたり詳しい方がいらっしゃったら、教えてください。)

2.マーケティング戦略からみたお土産菓子と贈答用菓子の相違点について
土産菓子 : ブランド、知名度、パッケージ、値ごろ感、アイ・キャッチャーなどか重要。2度目でないかぎり、味はわからない。わたしも、ときどき、パッケージだけ見て買ってている。
 贈答用菓子 : 高級感が必要。価格は維持されていなければならない。品質・味などに定評があること。パッケージなどは重要だが、多少過剰感もある。

3.おたべのマーケティング戦略の特質
後発メーカーでありながら、新商品の開発で成功したこと。カテゴリー独占でなく、トップメーカーであること。他社の参入を阻止せず、製造指導したことは注目される。「餡入り生八つ橋」という新概念を作りだすことを目標にし、みごとにそれに成功した。現在では、「おたべ」は餡入り生八つ橋の代名詞になっている。

4.今後の経営戦略
@おたべは現状維持
おたべは、すでに飽和点に立つしている可能性がつよい。しかし、強いブランドであり、今後おみやげとして大切に維持する。その他のバリエーションは、あまり試みない方がいいのでは。
A生八つ橋をもっと一般商品にする。
B画期的新製品
現在、株式会社おたべは、餡入り生八つ橋のバリエーション商品をいろいろ試している。しかし、このようなバリエーションで真に新しい市場が切り開けるか疑問がある。むしろ、かつておたべを開発したときのように、思いっきり既成概念と離れたお菓子をねらってみてはどうか。討論の中で「東京バナナ」といちご大福が話題になった。その伝でいくなら、「京いちご」といったネーミングで、洋風で新鮮、かつアイスクリーム感覚のお菓子を考えてみたいと思った。
ページ・トップへ


成否は、コーディネータにかかっている。

磯部 研二

第2回準備会のMGでも感じたことであるが、コーディネーターの役割が重要であり、ケースメソッドが有効なものになるかどうかはコーディネーターにかかっている。

従来からの教授法である「教師が40人に一斉に知識を注入する」方法だけでなく、これからは、フィールドワークやケースメソッドといった手法も取り入れようと考えています。しかし、今の高校生は一般的に自分の考えを人前で発表することが苦手です。また、教師側も「40人に一斉に知識を注入する」教授法に慣れており、いろいろな答えが出たときの対処に困る教師が多いと思います。

今回のケースメソッド体験では、異なる職種・異なる世代のグループでの議論ということもあり、自分とは違う視点での意見を聞けたことが良かったと思いました。

これを高校でやろうとすると、同じ世代での議論になるので同じような視点になってしまい、自分と違う視点や価値観を感じることができないのではないか少し心配です。

しかし、エンタープライジングな人物を育てる学校ではぜひ取り入れたい手法です。

「設問」に関する私の答えは以下のとおりです。
1.おたべについて
・八ツ橋=「おたべ」だと思っていた。「おたべ」以外に八ツ橋メーカーがあることを知らなかった。
・学生時代に京都に出てきて、初めて見た「おたべ人形」は印象的で記憶に残った。 効果的なディスプレーだと思う。
・焼き八ツ橋よりも生八ツ橋のほうが好きである。
・最後発メーカーであるが、そのように思わせないパッケージデザインである。(江戸時代の茶店 を連想させるような、おおば比呂志氏のデザイン)歴史のあるように思わせるデザインである。

2.お土産用菓子と贈答用菓子の違い
・お土産用菓子:価格設定低い 贈答用菓子:価格設定高い
・お土産用菓子:限られたある地方でのみ販売
・パッケージデザインの違い お土産用菓子:庶民的大衆的 、 贈答用菓子:高級感

3.マーケティング戦略の特質

・さまざまなアイデア(企業内努力(味目付制度)・ネーミング・パッケージング・ブランド戦略・ おたべ人形のPOP)が他社より優れている。

4.今後の戦略
・現在のお土産用菓子「おたべ」は主力製品として残し、別商品として贈答用菓子を新製品開発 する。
・おたべブランドはお土産用菓子のイメージが高いので別会社を作り、お茶菓子とし ての新製品開発をする。(比較的高い価格設定で販売・全国展開)
ページ・トップへ





トップ・ページ     教材開発部会一覧    ページ・トップ