国際化研究部会第30回例会の概要

 


日時:平成16年3月13日(土)6:00〜8:00p.m.
場所:大阪産業創造館6階会議室A
内容:別添概要の通り

第1報告

テーマ:国境を越える技術の合法、非合法
報告者:清原国際特許事務所       
     高知工科大学 近畿大学理工学部 客員教授 

弁理士 清原義博

技術の海外移転
(1)技術移転の態様
 技術は多様な経路で移転される。本社から海外子会社への企業内技術移転もさまざまな経路で進められる。具体的には、技術実施権、生産設備、マニュアル、ノウハウ、教育訓練などによる知識と情報の移転である。
 中間製品、部品、補修品、そして治工具そのものが技術で、機械の保全や修理、原材料の調達方法、機械の操作にも技術移転が必要である。
技術の象徴ともいえる、特許、実用新案、意匠、商標などの工業所有権、そして図面、指図書、仕様書、訓練プログラムなど、ノウハウも技術移転の対象である。

(2) 金型について
@ 金型設計技術
金型は、あらゆる工業製品を製作するために必要で、金型の精度・品質が工業製品の品質を確保し、その性能が工業製品に大きな影響を与える。
ところが、金型の製作技術、特に金型設計技術は簡単に習得できない。
その理由は、金型は新しい商品ごとに1回しか製作されないからである。
したがって、製作経験はその1回で終わってしまって、次の仕事に活かせないのである。したがって、なかなか経験が蓄積されにくく、経験が蓄積されていくと、それがノウハウとなるのである。ノウハウを蓄積しにくいのが金型設計技術といえる。
金型設計技術は、簡単に育成はむずかしく日本企業の海外調達担当者の悩みの種となっている。

A 金型設計図面流出による技術移転
そこで、登場したのが、日本の金型企業が、金型製作のために作成した金型設計図面を不正流出して、海外、低コスト国、で製作させる方法である。この傾向は、昭和60年1985年頃から始まり、平成2年1990年頃からは頻発するようになった。
平成5年1993年不正競争防止法に営業秘密の規定が規定された頃から、金型図面の不正流出が急増していくのは、なんとも皮肉な現象であった。
日本の金型ユーザーが、海外での金型調達を促進するため、日本の金型企業が製作した金型設計図面を調達に利用した結果が、技術が非合法的に国境を越え、自社商品の競合相手を海外に育てることになっている。

(3)技術移転―金型技術の移転事例の問題点
 1.図面の海外流出
金型産業は、全製造業の競争力の基盤を支える重要な産業である。
一方、日本の金型図面が無断でコピーされ中国などで出回っているという事実が存在する。
放電加工機などの性能向上、NC化が進み、図面や加工データさえあれば、中国でも日本と遜色のない金型が製作できる。
日本の優れた技術が、創作者の意に反して海外に流出しており、この現象は、日本の製造業の海外に対する競争優位を維持することは困難である。
 金型図面が金型業界の意図に反して海外に流出している。
2.図面要求の理由
金型取引が国内でつくられ、国内で使われていた時代は、製作業者と、メンテナンス業者は同一であり、ユーザーは図面を必要としなかったからである。

(4).機械等設計図面(以下、設計図面 金型を含む)の国際的法的保護
元来、金型や機械などは特許権など工業所有権で保護されるべきであるが、工業所有権には、1883年制定のパリ条約規定の属地主義の原則があり、侵害が想定されるすべての国で権利を確保する必要があり、実務的に無理がある。
一方、著作権は1886年締結のベルヌ条約があり、著作権は非属地性を原則とし国境を超え保護される。金型図面の著作権保護を強化して技術の非合法移転を避ける必要がある。

 

第2報告
テーマ:「プロパテント政策としてのアメリカの産学連携」
報告者:大阪府立大学経済学部 教授 宮田由紀夫


概要
アメリカの産学連携を活性化した1980年のバイ・ドール法は特許法の改正であり、知的財産権の保護を強化すれば、技術革新が促進されると考えるプロパテント政策の一環として解釈できる。アメリカでは第2次大戦後、連邦政府が大学に積極的に研究資金を提供するようになったが、研究成果の帰属は省庁によってまちまちであった。バイ・ドール法は大学が連邦政府からの資金で行った研究の成果を特許として保有し、大学がそれを企業に対してライセンスしてライセンス収入を得てよいと定めた

政府・議会は、特許が国有のままであるより、大学に特許を持たせライセンス料も稼げるようにした方が、大学が積極的にライセンス先を探すであろうと期待したわけだが、期待通りバイ・ドール法制定以後、それまであまり産学連携に熱心でなかった大学も技術移転室(TLO)を設立したりして、産学連携に積極的になった。大学の研究は依然として基礎研究が中心であるが、過去20年間で大学はアメリカの国全体での研究費使用者としてのシェア以上に特許取得者としてのシェアを上昇させており、同じ研究費を使っても成果を特許にしてライセンスすることに大学が意識改革をおこしたといえよう。

 しかし、ライセンス収入は大学が使用する研究費を稼ぎ出すまでは至っていない。大学の優れた研究水準は税金によって維持されなければならない。さらに、企業にとってライセンスを受けるという技術移転の方法は医薬品分野では有効だが、その他の分野では論文・学会報告といっただれでもアクセスできるチャンネルや人的ネットワークを通した関係が重要である。技術革新にとってのプロパテントの意味は企業に対してと大学に対してとでは必ずしも同じでないという点に注意する必要がある。

 

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