報告者:北 真収氏
野村総合研究所上級コンサルタント
東工大大学院生
(1)日本企業は、これまで、プラント輸出、技術供与、合弁生産などを通して、中国へ技術移転・生産移転を行なってきた。その結果、中国に量産型の操作技術が形成された。ただし、国際ライセンス契約の内容と大きく乖離した中国の技術導入契約管理条例が、技術移転に対して、影響を与えてきたことも事実である。
(2)組み立て型産業に代表される中国地場製造業の特徴は、一貫生産の意識が弱いローエンド組み合わせ型のアーキテクチャ、操作技術に依拠した少種大量生産方式、柔軟性に欠ける機械的作業組織などにある。また、フルセット型から企業間分業へとシフトしてきたが、同一部品の複数サプライヤへの発注、市場取引など比較的開放的なメーカー/サプライヤの関係が選好されている。
(3)市場戦略とは現地環境への適応パターンを考えることであるが、日本企業が、中国市場という環境に適合するための方法の1つに企業間連携がある。これは、同等の力を持つ企業同士が、同一の市場で競合している状況での提携、相互の目的を達成するために互いにリスクを分担し合う提携であり、従来の提携とは異なる。既に、日中企業間で生産を中心に連携の試行錯誤が行なわれようとしている。相補性の観点から見ると、擦り合わせ型アーキテクチャの日本企業とローエンド組み合わせ型アーキテクチャの中国企業による共生型製造モデルへと発展する可能性はある。
(4)共生型のモデルに発展する条件とでもいうべき、企業間連携に求められるマネジメントは、文化や商慣行、暗黙知化しているルールに企業間でギャップがあることを十分認識し、共有し合える部分では相互にコミットすることである。とりわけ、技術情報などのインタンジブルについては、企業間のインターフェースをルール化することは難しいが、互いの情報開示によって得られる受益性がバランスされなければならない。日本企業にとっては、日中間の技術力の差を念頭に、開示すべき技術の選別とその優先順位付けに留意する必要がある(北
真収記)。
報告は海外進出を成功に導くための進出前の準備的要件と進出後の現地経営に関わる要件に分けて述べられた。
第1報告は長期駐在した中国での経験を理論的にまとめ上げた優れた報告であった。従来の事実だけの報告だけではなく理論化している点で評価できる。
第2の報告は、そのテーマからもわかるように、海外進出で成功するための要件についてポイントをついた報告であった。
ただし、両報告にも言えることであるが、国際化研究部会はVB,SMEの国際化に関する研究が主体であり、そろそろそのものずばりの研究も期待したいところである(米倉穣記)。