日本企業の中国進出が増加している。ジェトロ白書(1996年)によると、日本の対中貿易の投資ブームは第1次:1984〜85年、第2次:1988〜89年であった。また中小企業白書(2000年)によると、第3次ブームは1991〜96年まで拡大している(拙著2001年)。さらに、対外貿易経済合作部統計(巽氏資料)によると2001年は2000年の倍の件数(2003件)にまで増加している。この様な状況の中で巽氏の報告は現中国を知る上で大きな意義があったと言える。
報告はまず第1に、中国経済の状況について行われた。中国経済の好調、対外貿易での黒字、日本の対中貿易の赤字、対中投資件数などデータに基づいた説明があった。GDP成長率は2000年8.0%、2001年7.3%、2002年1-3月7.6%と高い水準を示している。GDP1兆ドルは世界第7位、外貨準備高は2,274億ドルで日本、EUに次ぎ世界第3位である。但し、香港を入れると第2位になる。消費者物価上昇は0.4%で落ち着いている。失業率も3.1%で安定した雇用がある。また、固定電話は1億7千万(世界第2位)、携帯電話は1億2千万(世界第1位)で世界をリードしているなど、民営部門も社会主義市場経済の中で大きく伸長しているとのことであった。
次に、日系企業の状況について報告があった。2000年10月1日現在、中国の在留邦人数は46,090人。香港、上海、北京、大連、深圳、広州などが多い。日系企業数は上海3,000社、大連2,000社などが突出している。中国への投資の70%が利益を上げている。東大阪商工会議所会員35社のアンケート調査では黒字46%、均衡27%、赤字27%であった。進出形態で最も多いのが委託生産で、これは中小企業の中国進出へのひとつの有効な戦略だと思われる。
第3に、中国への投資リスクについて報告があった。とりわけ問題になる点は次の諸問題であるという。人治社会、各省・市の保護主義、偽物問題、三角債問題、水問題、法制度(法律・通達の不透明さ)、乱収費、公務員の不正、外貨管理が厳しいなどである。これらの点は今後の中国進出企業にとって十分考慮しなければならない問題だと思われる。
第4に、中国のWTO加盟により、地場企業も、日系企業も他国企業との競争が激化するとのことだった。この点は、2001年通商白書でも指摘されている。
最後に、対中進出の進め方について言及された。中国で生産をする場合、中国を理解できる担当者をつくれるかにかかっている。そのためには、在日中国人(留学生を含む)の活用も考えられる。中小企業にとって現地での会社形態はまず委託加工か補償貿易でスタートしたほうが良いのではないか。100%日本の資本では、現地管理が難しいとのこと。また、合弁の場合、中国のパートナーをどの部門に処遇するかが問題であるとのことだった。
以上、中国進出を検討されている企業にとって時宜を得た報告であり、参加者も大いに参考になったのではなかろうか(米倉穣記)。