日本経済新聞2001年(平成13年)4月3日 13面(NEXT関西)

SOHO提供にVB活躍
大阪の活性化にも一役
空室生かす

大阪市の都市部のスモールオフィス・ホームオフィス(SOHO)授業者にオフィスを提供するベンチャー企業(VB)が増えている。大企業の支店縮小や本社機能の東京への移転で大阪市の都心部には空きオフィスが目立つ。一方で交通が便利な都心部にオフィスを構えたいと考えるSOHO事業者は多い。こうしたVBの活躍は大阪を「SOHOの街」に変えていく可能性を秘めている。

大阪証券取引所(大証)に程近い中央区船越町オフィスビル。3月20日にこのビルの8階部分が「スモールオフィスクラブ」として改装オープンした。これを運営するインターセル(大阪市)の北秀司社長(56)は「SOHOの拠点にして大阪の活性化し貢献したい」と意気込む。 昨年秋までこのフロア大手設計事務所の大阪支店の分室だった。経費削減に迫られたこの大手建設事務所は大阪支店を縮小、フロアを返却した。

ビルを所有する明商(大阪市)の社長でもあるインターセルの北社長は「フロアを丸ごと借りてくれる企業を探すのは困難」と判断。フロアを19のブースに分けてSOHO事業者に貸すことを決めた。

ブースの広さは6万u前後、毎月の賃料は49000円から。保証金は一律15万円とし、入居者の経済的負担を軽くした。入居者の一人で投資情報提供サービスのニーテック(大阪市)の西尾強社長(58)は「顧客の信用を得るために大証の近くにオフィスを持つという念願がかなった」と喜ぶ。

「こんなスタイルでどうですか」「もうちょっとここを短くして」―――。西区江戸堀のオフィスビルにある「ビューティースクー」では美容師とお客の間でこのような会話が交わされる。「美容師に特化したSOHO向けオフィス」。運営企業の日本アイ・ディー・ユー(大阪市)の池添吉則社長(36)はビューティースクーをこう表現する。

アイ・ディー・ユーは店舗に属さないフリーの美容師に洗面台などの設備を時間貸ししている。美容師はお客から受け取った料金の40%をアイ・ディー・ユーに支払う仕組みだ。

このビルは2年前に取り壊すことが決まっていた。モダンな雰囲気の外観と内装に着目した池添社長がビルの所有者と交渉、ビルを借り上げて改装した。現在、72人の美容師が登録している。週末7つある洗面台はフル稼動。登録美容師の一人の山本恵美さん(31)は「都心部なのでお客が多く、やりがいがある」と話す。

「落語に登場する長屋の隠居」。西区西本町のオフィスビル2階でSOHO向けオフィス「SOHO*egg」を運営するスタイリング研究所(大阪市)の沢池憲一社長(56)は自らの役割をこう表現する。

沢池社長は大手建設会社に勤務していた際の人脈を生かし、入居者に無料で仕事を紹介するほか、経営相談にも応じている。その背景には「入居者の収益が安定すれば賃料収入も安定する」との考えがある。入居者の一人で人材研修サービスのアシスタント(大阪市)の樋口忠明社長(48)は「ほかではこうしたきめ細かいサービスは期待できない」と評価する。

オフィスビル情報サービスの生駒データーサービスシステムによると、大阪市内のオフィス空室率は9%で、東京23区の4%を大幅に上回る。だが、空室率の高さはVBにとって事業拡大のチャンスが大きいことを意味してもいる。

特徴のあるSOHO向けオフィスが増えれば、大阪が新規開業に適した都市として、起業家の注目を集めるかもしれない。

(大阪経済部 長島芳明)


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