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書評集

ベンチャー関連の本の書評を掲載します。
会員からの書評の投稿を歓迎します。
書評に書かれた評価は、あくまでも書評者の個人的見解であり、関西ベンチャー学会の意見ないし評価を反映するものではありません。


三菱総合研究所『図解 新世紀ビジネスチャンスの読み方』
松田修一『ベンチャー企業』
太田肇『ベンチャー企業の「仕事」』
堀内博『京都だから成功した』
三菱総合研究所ゲノム研究会『ゲノムビジネス』


三菱総合研究所「図解 新世紀ビジネスチャンスの読み方」

東洋経済新報社、1999.12.30、247pp

内容紹介

まず各章の構成は次の通りです。第1章では新世紀に入って大きな変化が予測されるビジネス環境のキートレンドをどう読むかについての見方を提示しています。第2章では新世紀のビジネス・チャンスを見通すための重要な視点として16テーマを選び、これについて展望しています。第3章は新世紀に成長が期待される産業分野のほか、既存産業の中で生まれる新たなビジネス・チャンスに着目して15の産業分野と選んで評価し分析しています。第4章は構造転換を迫られている日本産業の再生シナリオを描き、新産業の創造と企業経営の革新をどう進めていくかの指針を示しています。

日本経済はバブル崩壊以後の長い低迷の時期を得て、これからの日本経済の再生にあたって民間の自助努力が必要となってきています。この本は新世紀に向けてのチャレンジする企業家やビジネスマン、そして広く産業界の人々の役に本であると私は思います。

紹介者 細江一樹

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松田修一 『ベンチャー企業』

日本経済新聞社、1997年10月12日、217pp.

紹介

タイトル通り、まさにベンチャー企業について1冊に凝縮された本である。
筆者のベンチャー企業のコンサルティング経験をもとに「ベンチャー企業」 をわかりやすく解説している。ベンチャーに対して予備知識がなくても読み やすい構成になっていて、一般中小企業とベンチャー企業の違いから実際に 起業した際に生じるリスク問題や法律問題までと基礎知識から専門分野まで 多岐にわたって集約されている。

また約30ぺージごとにある"COFFEE BREAK"というコラムでは 「効果的なM&A法」や「株式会社資本金1000万円の是正を!」など身 近で興味深い題材をとりあげている。
ベンチャーを起業しようとしている人への手助けになることはもちろん、 ベンチャー企業についてこれから学ぼうとしている人への入門書としても 最適の一冊である。

紹介者 水落智子

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太田肇『ベンチャー企業の「仕事」』

中公新書、2001年、D+192p

紹介

この本は、ベンチャー企業の組織が大企業のそれと実は同じようなものだということを指摘している。大半のベンチャー企業では、労働者を奮起させるような報酬制度も有名無実で、トップダウン型の経営手法が取られているというのである。

ベンチャー企業の役割は、不況期の雇用の担い手と労働あり方の転換にあると本書では規定されている。本当に雇用の受け皿としての機能しているかについてきちんとした検討を加えてはいない。むしろ、ワークスタイルの転換に重点が置かれている。「組織の歯車」や「長期雇用」といったこれまでの労働観から「仕事を通して自己実現する」という自律的な労働観へ転換が起きているが、ベンチャー企業においてもそういった価値観を抱く労働者に場を提供できていない現実を浮き彫りにしている。

紹介者 中西敦信

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堀内博「京都だから成功した〜ベンチャーから世界企業へ〜」


柳原出版、2001年4月1日、A+245pp

内容紹介

なぜ京都からたくさんのベンチャー企業が育ったのか?どのような理念でその企業家たちは事業を起こしたのか?(または、先代の事業を受け継いでいるのか?)そんな疑問に答えてくれるのが、堀内博氏著の「京都だから成功した」(2001年刊行)である。新聞記者であった筆者が、自らの視点を交えて、世界企業へと発展した京都生まれのベンチャー企業家の生の声を読者に届けてくれる。しかも、その数は26社・総勢28名にも及び、多種多様な仕事への理念・体験談・将来の起業家へのメッセージが聞ける。現役の企業家の声はまさに信憑性に帯びている。これから起業を考えている人や若者に対し、事業を起こすために大切なことは何か?を強く訴えかける。

紹介者 福森由里子

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三菱総合研究所ゲノム研究会『ゲノムビジネス』

エイチアンドアイ、2001年

紹介

解説では多少省きましたが、これ一冊で最近のバイオ関連のことが分かるよう、親切な構成になっており、「これから勉強を始めよう」といった私のような読者には良いと思いました。SNPやDNAチップなどの基礎的な用語の説明なども載っており、難しいですが、知識ゼロからでも読めます。また、内容の幅も、地域へのバイオ産業の集積や、さらに発展したバイオ技術を使った場合の倫理問題までバラエティーに富んでいます。ただ、もっと突っ込んだ内容を、と求めた場合、あまり深くまで掘り下げた内容になっておらず、「物足りなさ」があるかもしれません。例えば私は地域のバイオ産業の集積の分野についてもっと知りたかったのですが、やはり内容に物足りなさを感じました。

内容

この本では、ゲノムビジネスのあり方について、日本と欧米との技術力・市場・企業・大学などの比較がなされています。まず、ヒトゲノム解析など、日本のバイオ技術は欧米に比べて遅れを取っていることが指摘されます。しかし、さらにゲノム研究を進めていく上での重要な技術である、たんぱく質の研究やナノテクでは比較的日本は競走優位を持っているので、将来的には逆転も可能、としていますが、ゲノム研究をする上で重要なベンチャーや大学のあり方、市場の整備などに不安があるとしています。バイオ分野は基礎研究を技術へ、そして製品化へとつなげていかなければならない分野ですが、基礎研究を行う大学などの研究機関がビジネスにつながらないこと、大学(科学)と大企業(技術)の掛け橋となるべきゲノムベンチャーが少ないこと、それを支援するVCなどの未発達などが挙げられていました。

視点

この本の視点は、「日本のゲノム研究のレヴェルは欧米に比べて非常に現在立ち遅れている。これに対してどう追いついていくか」というところにあります。そこで成功事例としてアメリカのモデルを調べ、その成功要因として活発なゲノムベンチャーや、それを支援するVCなどの様々な機関、盛んに提携する大学や大企業が挙げられていました。確かに日本のゲノムベンチャーは数の上からもアメリカよりも少ないし、技術的にもリードされています。この本では「日本は社会風土的にリスクテイクはしない」として、それが、やや国や大企業主導の現状につながっている、としています。さてこの本による今後の展望としては、国が主導でプロジェクトを立ち上げ、その研究プロジェクト自体を通じてバイオ市場を創り出すことや、ゲノム分析のための情報処理などは(アメリカではゲノムベンチャーがやっているが)、日本の情報処理等の大手企業で代替するなどのモデルを予測・提案しています。

考察

しかし、この点に関しては少し疑問が残ります。まず第一に、現在はアメリカなどに比べてリスクテイクする風土は少ないのは確かですが、将来に渡ってそれが「日本型のモデル」としてあり続けるものだろうか?ということです。「日本型」といえば「国家主導」や「大企業」などと思われがちですが、そう決めつけてしまってもいいものだろうかと思います。「日本的」というものはもっと他のものに対して使われるべきかもしれないと思いました。また、第二に、その「日本型」のままで日本のゲノム分野は果たしてして良いのか、という問題です。キャッチアップの分野では確かに大企業の規模や国家による長期的なビジョンは強みを発揮するかもしれませんが、バイオのような先端分野でその強みは果たして活かされるのか?と思われます。先端分野では何が今後重要になるかは分からず、また自由・活発なコミュニケーションなどから意外なものが生まれたり発見されたりするのではないでしょうか。「ベンチャーが盛んでないから他のもので代替する」のではなくて、やはり「ゲノムにはベンチャーがもっと必要で、そのために環境の整備も必要である」というのが本筋ではないでしょうか。もっとも、「今ないんだからベンチャーを育てつつ取り合えずは力のある国家や大企業のパワーを活かしていくべき」という論なら十分にうなずけると思います。

書評者 安居大輔
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