| 「ブロードバンド時代に向けて、大阪・関西が戦略的に対応すれば、新しい道が開ける」----。大阪市立学大学院教授の塩沢由典氏は、IT革命の進展は関西再生のチャンスでもあるという。進展は関西再生のチャンスでもあるという。新時代に関西いかに臨むべきかを話してもらった。 |
パリは美しい都市と言われているが、実際には必ずしも美しいとは思わない。しかし、絵画に描かれ、小説に書かれ、清華の舞台になり、神話が出来た。その神話に世界の人々があこがれている。神話を作り出すのが雑誌であり、映像であり、いわゆるメディアの役割ということになる。その差が大阪がファッションの先端地域になれない素地を作ってしまったともいえる。
文化産業が育たず、文化都市にふさわしい街並みを作らなかったことが、大阪のイメージを外側から悪くしてしまった。その結果、イメージ商品の分野では大阪は優位に立てなくなった。大阪府のアパレル関連出荷額は約8000億円とされているが、付加価値が5%違えば、約400億円損した計算になる。やはり関西という一日交流圏の中で、自分たちが流行を作り込むことを考えなかったことが問題である。
◇◆◇◆◇◆◇◆
もし、関西が独立すれば、どんな昨日を持たなければならないのか。外に向けた情報発信力よりも、むしろ内部向けの狭い情報回路を作り出すことが先決である。それがなければ独自の主張がなくなってしまう。そして内部の回路があれば、大阪。関西は少し違ったものがあるということで外部からも注目されることになるだろう。文学の世界も作家がいればよいということではなくて、作家が読者を持っていて、読者と編集者と作家の三角形が循環していることが重要なのである。
東京には外国の特派員が500人いるが、その人たちは関西よりもソウルを取材したがっている。関西で一週間滞在すれば宿泊代その他の経費がかなりかかる。ソウルの方がむしろ安くなる。しかも世界の注目度からしても、ソウルということになってしまう。
そういう状況の中で、大阪・関西は何をすべきかということになるが、私は日本国内だけではなく、アジアから見てどうなのかという発想が必要なのだと思っている。関西はアジアに近いと言われているが、本当にその実を上げようと思っているのだろうか。韓国や中国に関西からミッションを派遣しても、彼らからすれば日本から来たのであって、関西から来たというイメージはほとんど無い。やはり、英語や中国語で発信するメディアを関西は持たなければならない。それも、例えば香港やシンガポールの出版関係者を呼び込み、関西を拠点にして活動できるような環境作りが必要になるだろう。その意味では、FM・COCOLOは15カ国の人に企画・制作を任せて、いろいろな試みが行われており、上手く機能していると思っている。
◇◆◇◆◇◆◇◆
これからは、CATV時代あるいはブロードバンド時代になる。テレビは百チャンネル、二百チャンネルとなり、インターネットもさらに機能アップするだろう。その時、関西がどの程度情報発信能力を持つことができるかが、今まさに問われている。今から戦略的に取り組むなら、かなりの可能性があるが、時期を逸すれば時代に取り残されることになりかねない。
ブロードバンド時代、百チャンネル時代の課題は、きわめて低コストでいかに面白い番組を作ることが出来るか、そのノウハウを構築できるかどうかというころである。その場合、東京は失敗する可能性が大きい。テレビ製作は大変なお金をかけており、そうした手法に慣れ親しんだ人は頭の切り替えが出来ないだろう。
しかし、関西には大制作会社もなく、予算も限られている。むしろ低コスト制作に向いている。今の制作費をさらに10分の1に切り詰めて、制作することを考えたなら、新しい道が開けるはずだ。CATVを例にとるなら、取材から編集まで基本的にはひとりで取り組むシステムを確立することである。関西が本気でそういうことを考えれば、東京を逆転する可能性はあると思う。
たとえば、街中のファッションやハイ・ファッションを含めて、ファッション情報を専門に流す社ン寝るを作ることはそれほど難しいことではない。関西発の旅行チャンネルも考えられる。日本ではあまり知られていないが、行ってみたいというところはかなりあると思う。そういう仕組みやチャンネルを作ることはそれほど資金もかからないと思う。その意欲があるかどうかが決め手になるのではないだろうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆
21世紀の中ごろ、関西のGDPにコンテンツ産業がどの程度比率を占めているか、それが関西活性化の重要なファクターになると思うが、競争力を強めるためには、今からそういう布石を打つことが大事になる。それがなければ関西独自の情報回路を作れなくなり、関西発のニュースは多数の地方都市の一つということになってしまう。これではコンテンツ時代に大きな仕事は出来ない。
今後、モノが充足し、自分たちがどういう時間を過ごすかが問題になる。積極的な側面ではレジャーやスポーツであり、何かの情報を元に行動することになる。消極的な面では介護などがあるが、すべて時間がかじゃる。しかし、将来的には、こうしたコンテンツ産業や時間産業が商業と金融を合わせた経済規模になることは確実だ。
その時代に向けて、関西の産業構造を考え、その種蒔きを今からしなければならない。それもベンチャー方式で取り組むべきであると思う。篤志家から資金を集め、採算に乗る形の事業で関西のコンテンツ産業を伸ばしていかなければならない。
東京に行かなければ情報を得ることが出来ないと言われているが、東京の人はあまり日本のことを知らない。しかも、世界を見るとき、東京都大阪に差があるとは思えない。そうであるのなら、大阪にいて、東京も大阪も知っていることの方が優位になる。大阪の人はむしろ福岡や名古屋などを知るべきだと思う。情報構造は東京に一極集中し、大阪や関西にかぎらず、各地ともニュース発信に苦労している。例えば、関西のメディアが福岡の状況を流せば、当然、福岡は関西に注目し、情報も集まってくる。そういうことを意識的にできるかどうかが重要になるだろう。テレビでは難しいかもしれないが、IT時代の一つの良さはホームページがあるかことだ。優れた編集者がいて、面白いWebサイトをい作ることができたなら、発信場所がどこであるかは問題ではなくなる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
私が会長を努めている関西ベンチャー学会は、Webサイト充実に地うからを入れている。学生の間でベンチャーへの関心が強まっているが、学生がベンチャーを調べるとき、私どものサイトにアクセスしてもらえるよう努力しているわけである。国内に限らず、少なくとも、日本語を読める人には全部アクセスしてもらいたいと思っているが、関西の諸団体がそういう努力をしていくべきではないだろうか。
関西は情報発信力を高めるため、もがき苦しんでいるが、その苦しみを糧にすれば、新しいIT時代の可能性を切り開いていくことが出来ると思う。今、大きな転換期であるからこそ、戦略的に関西の新しい時代を築くことが出来るのではないか。
(沖居弘也、井田貴仁記者)