論壇
「第2創業」で経済再生を
大量失業時代
論説副委員長
斉藤 行巨
毎日新聞 2001年8月4日 25面(西論風発)
連想」ゲーム的にいえば、小泉・自民党の参院選大勝は、構造改革の断行―不良債権の最終処理―倒産・失業者の増大、となる。
この日本経済の近未来図が仮想のゲームにとどまればいい。だが、残念ながら大量失業時代は避けられまい。
かつて欧州では失業率10%の目安は駅前の公園が朝から新聞や雑誌を読む人々であふれる状態といわれた。
いま日本の失業率は4,9%(338万人)。これが一気に倍になることはないにしても、欧州に近い光景は出現するだろう。6,3%(68万人)の近畿はひょっとすると現実化するかもしれない。
政府が経済再生の決め手と期待するのがベンチャー起業家による新規創業である。このため、大学の持つ技術を産業界へ移すTLO(技術移転機関)の創設や、ベンチャー企業への資金供給を容易にする環境設備など、多くの支援策を用意した。
確かに現在の閉塞状況を打破するには、冒険精神あふれる若い起業家の登場が不可欠だ。80年代に地獄を見た米国が90年代によみがえる契機を作ったのは、シリコンバレーで半導体産業に取り組んだ若者だったようにである。
政府のベンチャー起業家育成の努力は重要だ。いま以上に支援態勢を強めることも必要だろう。
だが、政府の経済再生策で決定的に欠けているのが既存の中小企業をベンチャー企業に仕立て直す「第2創業」の視点である。
中小企業はすでに人材、販売、資金、信用、工場など多くの経営資源を持っている。100メートル競争でいえば、「第1の創業」であるベンチャー企業がスタート線から走るのに対して、既存企業は50メートル先、70メートル先から走れる恵まれた環境にある。
足りないとすれば、事業をゼロから見直し、新分野に挑戦する勇気と知恵である場合が多い。だから、ちょっとしたヒントや技術を伝授し、士気を鼓舞することで、思いもよらない新事業に転換する大きな可能性を秘めている。
成功率が1000に3つともいわれるベンチャー企業と比べ、第2創業ははるかにリスクは小さい。構造改革の痛みを緩和する効果も期待できる。
延命を図る中小企業向けの後ろ向き融資制度はもう要らない。経営者の自立と産業構造の高度化を妨げるだけだ。
そんな予算があるなら、経営者に勇気とヒント、技術を教え、第2創業を促す専門教育機関の整備が急務ではないか。
「中小企業の再生なくして経済成長なし」である。
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