会員論文

低金利、抜本処理の好機

高速道路必要ならPFIで

京都大学教授 吉田和男

日本経済新聞 2001年9月4日 朝刊33面


  阪神高速道路公団と本州四国連絡橋公団の将来像、債務の返済方法、インフラ整備のあり方はどうすべきか。大蔵省(現財務省)出身で地方行政に詳しい吉田和男京都大学大学院教授(財政学)に聞いた。

 民営化し運営会社に

---なぜ今、両公団の見直しが必要なのか。

 「特殊法人方式は戦後、短期間でこれだけの道路を建設できたのだから、高度経済成長期に適していた。しかし、現在は成長率が下がり、全国の道路網も整備を急ぐものはなくなったといえる。今後、百年かけて人□が半分程度に減るといわれている以上、道路や橋の需要は確実に縮小する。交通量の増加を前提にした両公団の債務返済スキームは成立しなくなった。かといって何もしないと負担は増えるばかり。金利の低い今こそ抜本処理に踏み切る好機だ」

---両公団はそれぞれどうすべきか。

 「阪神公団は国へ既存の道路を譲渡し、民営化して運営会社になればよい。債務を再計算し、自力で償還できるものとできないものを分ける。不可能なものは旧国鉄や国有林野事業の債務処理のように国が肩代わりするしかないだろう」

 「本四公団もこのままでは債務を償還できないから、国の支援で処理する。民営化して株式会社にし、地元出資金は株式に置き換える。インフラ会杜に適した規制を設けつつ、株価がつく水準まで利益を上げるよう経営強化に努める。瀬戸内三橋の通行料金を引き下げ、利用度を高める工夫が欠かせない」

 「都市」は公共事業で

---二橋の建設で培った高度な技術を継承するために、本四公団は存続すべきだという反論もあるが。

 「技術者を温存するために税金を投入するというのは本末転倒だ。海外橋りょう建設株式会杜を作って、自助努力で世界に活躍の場を求めればよい」

---近畿の自治体の問には都市再生のためにも道路整備を求める声も根強い。

 「新規道路の建設は公共事業でできるので、住民の意思次第だ。ただ杜会資本を整備すれば地域が振興するという開発型をやめ、安定成長時代に対応したインフラ整備の仕方を考えるべきだ。大都市の過密、交通渋滞対策などは、税金を使って公共事業でやるしかない」

 業界一時落ち込みも

---改革が近畿経済に痛みを与える懸念は。

 「建設工事が止まれば、建設業など関連業界は一時的に落ち込むが、公団のあるなしにかかわらず要らない工事はなくすのが当然。高速道路がぜひとも必要なら、PFI(民間資金を活用した杜会資本整備)を導入して進めればよい。用地買収は強制収用ができる国が担当し、建設から運営まではPFIにすべきだ」


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