今後は、計画=政府の役割をなるべく小さくして、市場による解決にすべてを任せるべきだという考えがある。市場か政府かと考えると、現状では政府の非効率性は否めないから、このような考えの出てくる理由はよく分かる。しかし、市場原理主義は、ある意味で計画経済の鏡像でしかない。それは、計画=政府に替えて、市場=交換という原理で社会を一元的に運営しようとする極端な考えである。 原理主義のような極端に走らないとしても、「計画対市場」という対比からは、政府と市場の「最適な混合」といった発想しか生まれない。21世紀の社会を考えようというとき、政府でも市場でもない、第3の原理が求められよう。
その手掛かりをカール・ポラニーが提出している。かれはアフリカ社会や古代ヨーロッパ社会などを考察して、安定したどの社会にも交換・再分配・互酬の3つの原理が組合わされていることを発見した。現代社会で、交換が市場、再分配が政府によって担われているとすれば、いま求められているのは互酬の役割を担う社会組織である。
その萌芽がNPOに見られる。ここで、NPOとは、営利目的以外のすべての非政府組織・団体とひろく捉えておきたい。いわゆるNPO法により法人化されたものだけでなく、社団や財団などの法人や、法人格をもたない組織をも含める。学校法人や医療法人、社会福祉法人などの非政府組織も、またNPOの重要な事例である。
NPOと営利組織・政府組織との差異は、収入構造の差異にある。NPO=非営利組織は、活動の受益者から一部対価を取るにしても、それによっては活動の全経費を賄うことはできない。それは寄付金や政府からの移転などを得て活動している。寄付金の総量は説明と同意に基づいて決まるから、NPOは政府よりつねに厳しい競争と評価にさらされている。そこにNPOの可能性がある。
社会には、市場の原理のみでは解決できないさまざまな問題がある。それらを社会保障を含む一般政府部門のみで担おうとすると、非効率性や即応性の欠如など、別の問題が生ずる。こうした問題は「小さな政府」の掛け声だけで解決できるものではない。そこに登場するのが新しい機能の担い手としてのNPOである。もちろん、NPOは、すべてを解決する魔法の手ではない。人間が担う活動体である以上、欠陥もあり、運営のまずさもある。社会福祉法人などでは、世襲制の弊害も目立ってきている。しかし、いま日本で求められているのは、市場でも政府でもない、第3の原理の担い手としてのNPOを育てることであろう。
こうした議論においては、「寄付金を非課税にせよ」などといった、税制面での育成策がしばしば語られる。しかし、より重要なことが忘れられていないだろうか。収入の原理が異なるといえども、NPOは、ひとつの経営体である。それが活躍し社会の期待に応えるためには、新しい目的と構想によるNPOを多数輩出させなければならない。このときもっとも重要なのは、通常のベンチャー育成の場合と同じように、 その経営体を組織し運営する経営者=NPO指導者であろう。NPOは、株式公開を目指して走るベンチャーではないが、新しい組織を作り、社会の合意を得て、維持・発展させなければならない組織としては、通常のベンチャーと同じ状況にある。
経済の活性化のために、アントレプレナーシップにあふれるベンチャーの担い手が必要なように、新しい社会を支えるには、非営利の組織を生み育てる多くのベンチャー企業家が必要である。ベンチャー活動が要請されているのは、市場における営利活動だけではない。互酬を原理とする非営利組織にも、アントレプレナーシップが求められている。